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犬賞賛




アメリカのジョージ・ベスト上院議員の「犬賞賛」と それにまつわる話です。

前世紀半ば(19世紀半ば)、合衆国上院議員となる前 彼は弁護士でした。

彼は、飼い犬を撃ち殺された男の弁護人として法廷に立ち、

陪審員を前に、何の下準備もなく、また書記や調査員などの補佐も置かず、

莫大な原稿用紙の山にも頼らず、ぶっつけ本番で演説をしました。

最愛の友人に裏切られ、彼を敵に回さねばならないこともあろう。


一生懸命に慈しみ育て上げた娘や息子が、

親の恩に報いぬこともあるだろう。

我々が最も身近に感じ、大切にしている者たち、

自分の幸福と名誉さえも、
その手にゆだねられると信じている者たちが、

信頼を裏切ることもあるだろう。

衝撃的な一時の行動で、人間は自分に寄せられていた信望を失すことがある。

成功を納めたときには、

我々の前にひざまずき栄光をたたえてくれた者たちが、
行く手に暗雲たちこめた途端、

真っ先に立ち上がって我々を非難することもある。

この利己的な世界において 

裏切ることなく、恩を忘れることなく、策略をめぐらすことなく、
無欲の愛と友情を与えてくれるのが犬である。


飼い主の

富める時も、貧しき時も 健やかなときも、病めるときも、

犬は傍らを離れることがない。

主人の傍らにいることができるなら、

寒風ふきすさぶ雪の中の冷たい大地に身を横たえることさえいとわない。

与える食べ物のない手をも、犬は親愛の情を込めて、なめ回す。

世間の荒波にもまれ、
傷だらけになろうとも、飼犬がその傷口をなめ、癒してくれる。

たとえ主人が乞食であろうと、
その眠りを王宮の番犬のように見守るのである。

友が皆、去っていく中で、犬だけは決して離れてはいかぬ。

財産が失われようと、信用が地に落ちようと、彼の情は空に輝く太陽のごとく、
変ることなく主人を包み込んでくれる。

世間から見捨てられ、

家も友も失うという運命を主人がたどらねばならないときも、
忠実な犬は、ただ置いてもらうことだけを望む。

そして 最期のときが訪れ、

死が主人の身を連れ去り、むくろが冷たい土の中に置かれたとき、
他の者が立ち去った後もひとり残るのは、気高さ漂う犬である。

前足の間に頭を伏せ、悲しみにみちあふれた瞳で墓守となる、

主人死してなお、忠実なのが犬である。

陪審員は五分間の休廷の後、

わずか50ドルの損害賠償をしていた飼い主に
500ドルの賠償金を与えたそうです。



                                           「ペットの気持ちがわかる本」ブルース・フォーグル著より

bulus.jpg 私がこの本に出会ったのは1994年です。
犬の本は多く購入しましたが
ボロボロになるまで何度も読み返したのは 
この本だけです。

ある時はしつけや訓練のために、ある時は老犬介護の迷いの中で、
そして・・・ペコが最期を迎える前夜でさえ 
この本を手元に置いて読み返していました。
そんな一冊です。

発行ペットライフ社 ブルース・フォーグル著


 
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