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老年性前庭疾患


ペコが死の5日前に倒れたのは この前庭疾患のためです。
老年性と書きましたが、老齢性前庭疾患又は突発性前庭疾患と言われています。
突発性という名はおそらく今だ『なぜ』これが起こるかが不明だからだと思います。
中年から老年の犬に多く起こるようです。

ペコは他の病気と重なって死んでしまいましたが、
この前庭疾患自体は回復可能な病気です。

ここでは前庭疾患について解説しますが、
私はもちろん獣医ではありませんので その点を考慮してお読みください。



前庭疾患を調べる時、神経系の病気や脳の病気として記されている場合もありますが、
これは『耳』の病気です。

耳は音を聴くことと、身体のバランスを保つ平衡器(へいこうき)のふたつの役割を持っています。

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耳は外から見える部分を外耳といい、音を集めます。

外から見えない部分を内耳といい、
ここに音の高低を感じる蝸牛(かぎゅう)と平衡感覚を司る三半規管があります。

この中間が中耳です。

内耳の蝸牛と三半規管をつなぐ腔を一緒にして『前庭』と呼びます。
蝸牛とはカタツムリの似ていることから名付けられました。

mimi1.JPG


前庭疾患とは神経症状をだす病気です。


斜頚(しゃけい)は片側性の前庭障害によるものです。
頭を疾患のある方へ傾け、同じ側の耳端も下げることが特徴です。


そして起きている時も寝ている時も同じように頚を曲げているのが特徴です。


歩行する時に疾患のある方を中心にして円運動をします。


眼振(がんしん)といって、眼球が往復運動をします。
水平眼振、垂直眼振、回転眼振に分類されます。


激しいめまい、嘔吐、吐き気なども起こるようです。


症状は急にあらわれることが多く、重症になると横に倒れて意識を失います。


治療には副腎皮質ホルモンやビタミン剤を投与し、
早期に治療を始めれば症状の改善が見られる場合もあるそうです。


この介護、看護の難しい所は 
犬自身が立てない場合や、吐き気がある場合、
水分や食事が充分に摂れないことだと思います。
獣医さんでの点滴、経口補液剤で栄養補給、
場合によっては鎮静剤などが必要かもしれませんから 
獣医さんと共に介護、看護にあたってください。


足元が不安定になっていますから犬が横たわる敷物は 
柔らかすぎないもので床の固さが身体や足裏に伝わるものの方が安心すると思います。
眼振が激しい時はそれが心臓へ負担をかける場合があります。



      

ペコの様子(雰囲気)がいつもと違うので午前3時に尿のため外に連れ出しました。
これが倒れる2時間前ですが ペコはこの時すでに円運動をしていました。

すぐに家に連れて帰りましたが寝付けないようで落ち着きがなく、
2時間後(5時過ぎ)にはフラッと立ち上がり数歩歩いて尿をして、
そして倒れました。その時 意識のないまま便も排泄され、目は回転眼振でした。

意識が戻っても立ち上がることができず横になったまま尿が出ていました。
眼振は回転から水平に変わっていましたが、
自分の眼球がグラグラと勝手に動いているとしたら 
とても気持ちが悪くて(船酔いのような)立ってなどいられないでしょうし、
気分が悪くて食べることも水を飲むことも、
おそらく横になっていてさえ しんどかっただろうと思います。

(この時の様子をご覧になりたい方は、漫画『落日』を見てください)

ただ本人の苦しさを他所に、頭を傾けたままの顔は この上なく可愛く、
こんな状態でもなければ写真にでも納めておきたいほど、愛らしい姿でした。




参考文献『犬の解体新書』



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