２２．　悠悠・楽楽　－長寿についてー

悠　悠　・　楽　楽　　― 長寿について ―　　　　　　　　　　　　　　　
佐藤　

私の母は昨年１００歳を迎えました。若くして夫を亡くし、それ以来女手一つで私達三人の子供を育て、今は一人で生活をしています。毎日、三度の食事をはじめ身の回りのことは全て自分一人でやっています。これといった病気もせず、俳句、手芸、ちぎり絵など老人会の仲間と楽しんでいます。子供たちの心配をよそに当分は一人で生活したいと言っています。

最近２回に亘り“オレオレ詐欺”の標的になりましたが、いずれも撃退しています。
百寿を迎えた母に表彰状と記念品が内閣総理大臣/東京都都知事/狛江市長から授与されています。

・・・　そんなことで私の母が１００歳になったのを機会に長寿について考えてみることにしました。掲題の“悠悠楽楽”とは私の造語です。

【平均寿命】
  二〇一四年の日本人の平均寿命は女性８６．８３歳、男性は８０．５歳で、ともに過去最高を更新したことが厚生労働省の調査で分かりました。女性は三年連続世界一、男性は前年の４位から３位になり、世界有数の長寿国であることを改めて示しました。平均寿命が延びたのは、がんや心臓病、肺炎、脳卒中などによる死亡率が改善したためと言われています。
   厚労省によると、男性の平均寿命の１位は香港で８１．２歳。２位はアイスランド（８０．８歳）で、日本、スイス、シンガポールと続いています。女性は、香港（８６．７５歳）が２位となり、以下スペイン、フランス、韓国の順です。
   厚労省では平均寿命とは別に、日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間を示す「健康寿命」も算出しています。二〇一三年は女性が７４．２歳、男性が７１．２歳でした。
       出典：厚生労働省簡易生命表の発表（二〇一五年八月）

【１００歳でフルマラソン完走】
  一昨年十月、カナダのトロントで行われたフルマラソンでインド系英国人男性　ファウジャ・シンさんが８時間２５分１６秒で完走し、、フルマラソン最高齢世界記録を樹立したそうです。初マラソンは８９歳。この大会が８回目の挑戦でした。
  先頭のランナーがゴールしてから６時間以上がたっていたため、主催者によりゴールはすでに撤去されていましたが、シンさんは家族や友人に囲まれながらゴールしました。当然、ギネス世界記録として認定されました。
  健康の秘訣について、シンさんは?スタミナ源はショウガ入りのカレーと紅茶。そして、苦手な人とつきあわず、ストレスのない生活を送ることだ?と話しています。
              出典：スポニチ（二〇一一年十月）

【人類史上初の男性１１６歳達成】
  男性の長寿世界一で、国内最高齢の木村次郎右衛門さんが京都府京丹後市の自宅で亡くなりました。満１１６歳でした。生まれた時は、勝海舟がまだ生きていた時代。二〇一三年六月亡くなるまでの時点で、７人の子、孫１４人、ひ孫２５人、玄孫（やしゃご）が１５人いました。米国の老人学研究団体によると世界最高齢は同国に同じ歳の女性が二人いましたが、誕生月の関係で木村さんが名実ともに世界最高齢とのこと。
  口癖は?サンキュー・ベリー・マッチ?。　最高齢の感想を聞かれた時、?お天道さまのお恵みのたまものです。万感こもごも、感無量の至りです?と何度も合掌していたそうです。
                 出典：ウィキペディア・フリー百科事典

【人間は何歳まで生きられるか】
  先日、自宅で書類を整理していたところ、昔（一九九九年九月）講演会へ出席した時のメモが出てきたので披露します。
  講師は、東京大学先端科学技術研究センター・軽部征夫教授。演題は?人間は１２０歳まで生きられる?・・・長生きのコツ５箇条。
  現代は、大昔と違って人間が生きていく上での生活環境が大きく変わってきている。一定の条件が整えば、最新医療に頼らなくても１２０歳まで生きられる可能性があるとのことです。その５箇条とは・・・
１．睡眠をとること
    一日に最低でも９時間の睡眠をとる。但し、まとめて睡眠をとる必要はなく、１．５時間を６回に分けて取  っても良い。ナポレオンが  眠らなかったというのはウソ。短い眠り（いねむり？）を何度も取っていた。レオナルド・ダ・ヴィンチは寝たり起きたりを繰り返してい  たとのこと。
２．栄養をとること（栄養のバランスが大切）
     タンパク質を十分にとること。体重１㎏あたり１ｇ、但し脂肪の取り過ぎに注意。脂肪は体重１㎏あた  り０．５ｇ以上取らないこと。  カロリー制限が寿命を延ばすことは実証済。痩せより多少太ってい  たほうが免疫力はある。いずれにせよ、カロリー摂取は“ほどほど”  がよい。
３．運動をすること
    自分の体に見合った運動をすること。あくまでも適度の運動を心掛け、疲労を残さないこと。ラジオ体操、  歩行は運動機能障害や生活  習慣病の予防に有効。運動嫌いのままでは体の老化は防げない。
４．ストレスを作らないこと
    少しのストレスはＯＫ。ストレスが全くゼロは痴呆に注意。過度のストレスをかけない、持たない。ストレ  スを分散させること。
５．趣味・使命感をもつこと
    囲碁・将棋・麻雀・絵描き・指揮者・政治家など…“手先が器用”“生きがい”を持っている人に長寿の人  が多い。脳を活性化させる  ことが重要で、脳を老化させてはダメ。将来に夢や希望が無くなった時に老化が始まる。

・・・これらはいずれも単純、簡単なように見えますが、すべてを同時に実行出来ないところに人間の弱さ、難しさがあるのでしょう。大きな使命感を持てば持つほどストレスは溜まります。ストレスを持ってもダメ、持たなくてもダメとなると結構難しいものです。加齢と老化は別であることを肝に銘じていきましょう。
ここで一句・・
““先を読め　読めるわけない　先がない””

【長寿の心得】
           大平蓮川作　（大正５年岐阜生まれ）
      人の世は山坂多い旅の道
   還暦　六十歳でお迎え来た時は　とんでもないよと追い返せ
古希　七十歳でお迎え来た時は　まだまだ早いと突っ放せ
喜寿　七十七歳でお迎え来た時は　せくな老楽これからよ
   傘寿　八十歳でお迎え来た時は　なんの未だ未だ役に立つ
  米寿　八十八歳でお迎え来た時は　もう少しお米を食べてから
  卒寿　九十歳でお迎え来た時は　年齢に卒業はないはずよ
  白寿　九十九歳でお迎え来た時は　百歳のお祝いが済むまではと言え
  茶寿　百八歳でお迎え来た時は　未だ未だお茶が飲み足らん
  皇寿　百十一歳でお迎え来た時は　頃をみてこちらからぼつぼつ行くと言え
  昔寿　百二十歳でお迎え来た時は　そろそろ譲ろうか日本一
   日本一長寿記録　泉　重千代【男性　鹿児島県徳之島　１８６５～１９８６　１２０歳】
     但し、年齢検証されず公式記録でない
  天寿　百八十二歳　これで思い残すことはない　天寿
        人生いつでも来いと言え

   ・・・気は長く　心は丸く　腹たてず　口を慎めば命ながらえる、人生達観しないとここまでの心境にはなれないと思いますが…。
せいぜい?四十にして惑わず?、?五十にして天命を知る?ところまで、　これもなかなか難しい世の中ですが、せめて?健康にご注意?くらいが精一杯のところでしょうか。　
     ここで一句・・
          ““年とらない　秘密教えて　サザエさん””

【ボケたらあかん長生きしなはれ】                          天中　新一郎作
                                   大阪で古書店経営：９４歳の時に作った詩
                                 昭和六二年朝日新聞、読者投稿欄に掲載

年を取ったら出しゃばらず　憎まれ口に　泣きごとに
人のかげ口　愚痴言わず　他人のことは　褒めなはれ

聞かれりゃ教えてあげてでも　知っていることでも　
知らんふり　いつでもアホでいるこっちゃ

勝ったらあかん　負けなはれ　いずれお世話になる身なら
若いもんには　花持たせ　一歩さがって　ゆずるのが
円満にいく　コツですわ　

いつも感謝を　忘れずに　どんな時でも　へえおおきに

お金の欲を捨てなはれ　なんぼゼニカネあってでも
死んだら持っていけまへん

あの人は　ええ人やった　そないに人から言われるよう
生きてるうちに　バラまいて　山ほど徳を積みなはれ
というのは　それは表向き　ほんまにゼニを離さずに
死ぬまで　しっかり持ってなはれ

人にケチやといわれても　お金があるから大事にし
みんなベンチャラいうてくれる　内証やけれどほんまだっせ

昔のことは　みな忘れ　自慢ばなしは　しなはんな

わしらの時代は　もう過ぎた　なんぼ頑張り　力んでも
体がいうこと　ききまへん
あんたはえらい　わしゃあかん　そんな気持ちでおりなはれ

わが子に孫に世間さま　どなたからでも慕われる
ええ年寄りになりなはれ　ボケたらあかん　そのために
頭の洗濯　生きがいに　何か一つの趣味持って
せいぜい長生きしなはれや　

【ボケない五箇条】 出典　（山口市　瑠璃光寺）
１．仲間がいて気持ちの若い人
２．人の世話をよくし感謝のできる人
３．ものをよく読みよく書く人
４．よく笑い感動を忘れない人
５．趣味の楽しみをもち旅の好きな人

　・・・ボケはＤＮＡからくるもので仕方ないと諦めていましたが、長寿の秘訣はいずれも先人達の有難い忠告と素直に受止め、これからは少しばかり努力してみようかな…と反省した次第です。

人は一つ一つ歳をとっていく。当たり前のようだが考えてみれば不思議なことである。漱石は『草枕』でこう書いています。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」
ともかく、私が平均寿命を過ぎても元気であれば、?長生きしてすみません?と、周囲の人と国家財政に迷惑をかけることを心の中で詫びつつ、ひっそりと小さくなって生きていこうと思っています。　　

　　　　（了）　　　　　　　　

付記　余談

『釣りの話』
  私は三年前に古希を迎えました。長年の会社勤めでは毎日机に向かい、アウトドア活動で自然と対話するようなことは一切ありませんでした。それは突然７０歳を過ぎた時にやってきました。海釣りにすっかりはまったことです。釣りなどは子供の頃、池で遊んだザリガニ釣り・・釣り針を使わなかったので正しくはザリガニ取りかも知れませんが、そんな私が海釣りに夢中になりました。現在私が住んでいる近くには金沢八景があり、風景の美しさは鎌倉時代から景勝地として人々の寛ぎの場所でしたが、一方昔からハゼ釣りとしても人気の場所でした。ここ周辺には平潟漁港をはじめ、柴漁港、金沢漁港があり、船宿も４０軒近くあり、東京や埼玉方面から連日太公望が集まってきます。会社に勤めていた時は釣りなど見向きもしませんでしたが、退職後自宅の周辺で散歩を始めてから、こんな地の利が良いのに釣りをやらない手はないと思い　一念発起した次第です。
  釣りを始めて気がつきました。船釣りは贅沢な遊びです。初めての人がカジュアルな格好をして手ぶらで行っても船宿が道具、エサ等全て用意してくれます。
  船長が知識と経験を駆使して魚が釣れる場所へ運んでくれます。それと同時に今では高性能化している高感度・超音波センサー魚群探知機なるものが魚の居場所を探ってくれます。釣った魚も下船後直ちにオーシャンテラスでワイン片手にバーベキュー。
  船釣りも回数を重ねる毎に奥が深いことが分かってきました。船長に頼ってばかりでは興味も半減、ならば最高のコンデイションで望むことになりますが、これがまた大変です。天候の確認は当たり前、その日の潮位、水温、波の高さ、風向き等々事前調査に余念がありません。学習効果もあり何とか釣果も徐々に上がってきました。
  金沢八景からの出船では通年アジ、イカをはじめマダイ、タチウオ、シロギス、カワハギ、サバ、イナダ、ワラサの人気魚種に加えマゴチ、マダイ、キンメ、クロムツの高級魚など魚種多彩に恵まれた東京湾の快適な船釣りライフが楽しめます。お陰で我が家の食卓は刺身、胆和え、天ぷら、焼き魚、煮付け、干物、あら味噌汁・・等々、魚ばかりとなり、栄養の偏りの心配と同時に肉料理が恋しくなっています。

皆さまも癒しと刺激の一日を過ごしてみては如何ですか。

（了）