「老いへの挑戦」                         
                                               
はじめに
 世の中の仕組みとして殆どの人が六五歳くらいで人生の一区切りを迎えると思います。いわば第二の人生の始まりであり、その後を如何に生き抜くかという事と思います。自身の考え方、取り組み方、そして行動へと、そのような意味で話してみたいと思います。良いか悪いか、あるいは他人と異なることかもしれませんが、あくまで自身の考え方です。突き詰めれば「老いへの挑戦」ではないかと思い文集のタイトルとしました。
現役時代
 現役時代を振り返ると管理だ、規制だ、コンセンサスだ、などと言った社会の中で、一方では自らの夢、希望、家族などとの間においてある種のジレンマと戦いながら、六五歳までは全く停年など考えたこともなく仕事一途に会社人間として生きてきた感じがします。定年ではなく停年と思っています。
会社を辞する決意
 一つのきっかけはリーマンショクの時、我が社も御多分に漏れず不況に見舞われました。我々の年齢、立場になれば大きな影響はなかったが、若い者は給料カット、週休3日、残業なし等その影響は甚大であった。こんな時停年考え、今一度会社の復活を期するか、今が引き時か、と考えました。また仕事の関係で多くの外国の人と接してきました。日本人に無いワークライフバランスという考え方に少なからず刺激を受けたものです。簡単に事は済まないのが現実でありましたが、世代交代で後は若い者に任せ自由の身になろうと決意をしました。
自由への開放
 自らが選択した停年(定年)という事であまり戸惑いを感じず第二の人生のスタートを切ることが出来たと思っていました。旅行などやりたい事も思う存分出来、悠々自適の生活を始めました。しかし会社人間として育ったためか、職との縁(人との繋がり、蓄積された経験など)との関係が尾を引いて断つことが出来ず、過去の良き時代の郷愁に浸ることもありました。誰もが高度成長期の恩恵を受け今の社会に無い豊かさを謳歌したと思います。築いた経験、体験、人の繋がりは大事にしつつ、しかし一方では過去の思い出に浸っていては前向きでないと感じていました。まして技術屋である自分としては一旦現役を離れるとその進歩の速さに追いつけないし、責任のない立場では意味のない事になってしまいます。何方かの講演で述べておられましたが、「過去を忍び、引きずっていては老けていくばかりで、この先の夢、希望を持って新たな前向きな生き方が肝要である」と。そんな意味もあり一旦区切りを付けた方が良いのでないかと思い始めました。
区切り
 区切りの意味合いは過去と断絶することではなく大切、関心を持ちつつ、しかし自分としては過去の蓄積した経験などに拘ることなく新たなチャレンジをして前向きな人生をと考えました。会社を辞する際、職を通じて教育は行ったつもりですが、若い社員から頼まれていた「企業人としての生き方」といったトータルの教育を宿題として残してしまいました。このこともありこの際自らの経験から得た事などを「回想録」として纏めて宿題を果たし、自らの精神的な区切りにしようと思い作成しました。後になってみると自分としては膨大なものになってしまいましたが、自らを振り返る意味でも価値あるものとなりました。
新たなスタート
 区切りを付け新たなチャレンジとやりたい事の課題を自ら定めてみました。新たなチャレンジとして生涯学習のテーマとして「政治経済」、やりたい事として長年続けた「コレクションの集大成」、開放された立場での「新たな人との繋がりの構築」、老いる身体との挑戦としての「健康維持」、これら四の課題を設定しました。同時に親、兄弟、妻、子供、孫など家族との円満な環境も考えねばなりません。
新たなチャレンジとして「政治経済」
  縁遠かった文科系の事という苦手であった歴史に取り組みを思い立ち始めました。しかし歴史には多様な面がありますが、時の政治経済色が強く、それなら「政治経済」に絞って学んでみようと、生涯学習のテーマとして設定しました。学問的には大学の講義などに参加、現実の政治、経済など時事的な問題については各種講演会や政治塾への参加、その他図書館の利用など、知識の習得と自らの考え方の確立を目指しています。政治家志望の者や、若者と討論するのもお互いに刺激を享受しあい、今のところギブアップすることなく続けています。
コレクションの集大成
 六十年来収集した膨大な量のマッチのレッテルのコレクションを纏めてみたいと思っています。暇に任せて少しづつ始めています。他人から見れば価値のないゴミ屑かもしれませんがコレクターにとっては価値あるものであり、最近はマッチの存在がなくなってしまい収集も思い通りにならず、このあたりで「マッチ四方山話」として纏めてみたいと思っています。
新たな人との繋がりの構築
 開放された状況においてやはり人との繋がりを持つ事は大切なことと思います。その意味で名古屋の鯱城学園(高年大学国際学科、)に二年間通学、年齢(六〇歳以上)も経験も異なる者との交流において新たな人との繋がりを持つことが出来ました。卒業後も各種同好会を通じて交流を深め活動を続けています。
健康維持
 今後の自らの生活課題として「体」「心、気」の健康維持かと思います。健康年齢八五歳位としてまずは何を置いても健康である身体の維持と思います。運動には縁遠くなってしまいましたが、最近になって効用が実感できるようになったハードなウォーキング(週末の鉄道会社主催イベントなどで汗をかき疲労感を覚える程度)に参加し、趣味の写真撮影も兼ね継続しています。思い通りになりにくい様々な周囲の環境の中で、自身の安定した心の状態を維持する事も大切ではないかと感じています。心の安定が無ければ気が起こらず行動に移すことが難しくなると感じています。
まとめ
 長々と第二の人生としてわが身の生き方を話してみました。今後はいずれにしても心身の老いは避けられません。自らに課題を課せ、自分自身を追い込み、行動実践に心掛けて頑張りたいと思っています。