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小姨多鶴 
★★★★★


日本人の中国残留孤児を主人公にしたドラマ。ちょっと、びっくりです!!
第二次大戦後、中国に残さた日本人女性の半生を描いた連続TVドラマ「小姨多鶴(多鶴おばさん)」が、2009年から中国各地で放送されているようです。
従来の中国映画やドラマでは日本人は侵略者として扱われることが多く、見ていて申し訳ない気持ち半分、所在無い気持ち半分…。あまり観賞する気になれませんでした。
今回は日本人が戦争被害者として描かれ、しかもチョー美形の人気女優、孫儷が扮しているではありませんか!  中国版「大地の子」。こんなドラマが放送されているとしたら、対日感情にもいくらか多様化してきたのだろうか。

実はこのドラマには原作本があります。アメリカ在住の人気女性作家、厳歌苓の小説がそれ。 ちなみに彼女は「新移民作家」の代表格で、映画『天浴(シュウシュウの季節)』の原作でも知られています。ネット検索すれば、原作本の入手も容易です。なお「小姨多鶴」の執筆にあたっては、実際、日本での複数の残留孤児たちに取材をされたそうです。2008年に出版、中国小説学会の最優秀作品にも選ばれました。


ストーリーは

終戦直後、まだ中華人民共和国誕生の前夜から始まります。
少女多鶴は、敗戦の黒竜江省の満州開拓団で、集落ごと日本軍部に集団自殺を迫られましたが、命からがら逃げ延びました。でも日本に引き揚げる途中で家族とはぐれ、悪い中国人に捕まり売り飛ばされるところを、通りがかりの善良な中国人の老夫婦に命を救われます。
実の娘のように介抱してしてくれた老夫婦に深く恩義を感じた多鶴は、何とか恩返しをしたいと、老夫婦に請われ、子供のいない彼らの息子夫婦のために、息子との間に3人の子供を生みます。息子の嫁は、戦争中に日本兵に追われて崖から転落して子の産めない身体になっていたからです。時代は共産主義革命により、男性は社会的倫理的に二奶(二人目の奥さん)を持つことが許されなくなります。多鶴は仕方なく息子の嫁の妹として生きる道を選びました。子供たちとも「お母さんの妹=小姨(おばさん)」として接する他ありません。決して自分の子供だとは告げない決心をしました。
さらに、日本人であることも隠さねばならず、口がきけないふりを…。そして一家の生活を支えるために日中は採石場で働き、仕事の合間には授乳で自宅に戻るといった苦労の日々を送ります…。

日本人開拓団が自決に追い込まれたり、引き揚げ途中で中国人に襲われたりする場面も盛り込まれ、老夫婦や、日本軍にひどい目に遭わされた息子の嫁も「日本人もひどい目に遭っていたのか」と、日本人に同情的な場面も描かれています。
息子や子供たちを巡って、義理の姉となった嫁との心の三角関係と葛藤、美形の多鶴に横恋慕する地方の共産党幹部のネチネチした厭らしさ、一時は第三の誠実な男性が現れてはや結婚、幸せに…、と思いきや…。
後半は、グッと目頭を押さえざるを得なくほど、これでもかと続く不幸…。
なかなか泣かせます。
でも、ご安心。そこは中国の国策ドラマです。可愛そうなままでは終われませんものね。まあ、最後まで見てみてください。中国側から見た「残留孤児」ドラマとして、なかなか興味深いものがあります。
孫儷多鶴を演じさせているところも意味深長です。

監督:

出演;
    

安 建

孫儷
姜武
闫学晶
冯雷
姚刚 etc.