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中国式离婚 ★★★★☆
中国の連続ドラマって、20話とか40話とかで構成されているので、第1話では聴き取りづらかった会話も、10話目くらいになると、主人公たちの話法や言葉のクセに慣れてきます。また、主題に触れる言い回しが繰り返し登場するので、自然と覚えてしまうこと。セリフもより日常的です。
ただ、問題は観賞するのに、ちょっと時間が掛かります（笑）。
さて本作品は上記の意味でも、大いにお奨めです。2004年、中国で最優秀ドラマ賞に輝いた作品だそうです。
現代中国に潜む、都市部のリアルな夫婦問題を取り上げた23話仕立てのドラマ。20年くらい前のアメリカ映画に「ローズ家の戦争」っていうのがありました。マイケル・ダグラスとキャサリン・ターナーが離婚をめぐって殺し合いにまで発展するブラック・コメディでしたが、これの現代中国版でしょうか？30代の中年夫婦を中心に、夫婦間の心理的葛藤と矛盾を主題としながらも、急激に市場経済化が進む都市社会に噴出するさまざまな社会エピソードが絡んで、スリルとサスペンスたっぷりの楽しめるドラマになっています。
妻の夫への物言いがなかなかリアルで、同世代の女性としては日本人であれ、思わずグサッと刺される部分あり。さすが中国都市部の夫婦に大変反響が大きかったドラマです。
原作は、中国の人気女流作家王海鴒。現代中国が抱える、夫婦問題、結婚問題をシリアルに炙りだす作風で話題の作家です。
ストーリーですが、
ドラマに登場するのは、地方都市に暮らす国立病院外科医の夫、宋建平と、小学校教員の妻、林小楓、6歳の長男の3人家族。
妻の林小楓は最近思います。開放経済政策・市場経済化の影響で、周囲がどんどん豊かになっていくのに、自分の夫は名誉やプライドが邪魔をして、収入アップや出世競争にあまり関心がなく、家庭の収入は一向に上がらない。近所の子供たちは、みんな、いい学校に行き、習い事もしている。自分の子供が不憫で仕方ありません。自分も働いているけれど国語教師であるゆえ、家庭教師の高額な副収入も望めません（いつか林老師の会話の授業で、老師の友人が英語教師で“家教”のアルバイトで家も建つくらい稼いでいるって、話してましたっけ）。
さらに、教師であること、子供、夫に加えて自分の老いた両親の世話もあって、ようやく夫が外資系病院へ“跳槽（tiao cao）＝転職”を果たすと、自ら曰く「子供のため、夫のため、両親のため」と職を辞し“家庭婦女（専業主婦）”になります。でも、いざ専業主婦となってみると、肩書きも地位のなくなり、林小楓であることより、宋建平夫人としてしか存在が認められなくなった感じるようになります。そして、意外に有り余る時間を持て余します。夫に対する不満が貯まり、そしてケンカが絶えなくなる…。
結婚7年目の中年夫婦を通して中国社会のあり方を描いていきます。安定を望む腕のいい外科医の夫に対して、現在の倍以上の給料をもらえる外資系病院への転職を勧める妻。長男の教育費は膨らむ一方で、次第に夫婦の感情の縺れが露わになっていくというのがその粗筋です。
毎回繰り広げられる激しい夫婦げんかのシーンが、とにかくモノ凄いんです！ 妻が夫を「宋建平、你」と呼びつける語調が厳しい！ さすが男女平等のお国柄だなぁ、しきりに感心させられます。
また、昨今流行のインターネット恋愛など世相を象徴するシーンも織り込まれています。普通の中流家庭を築いてきた夫婦の間に少しずつ不信感が生まれ、徐々に家庭が崩壊していく…。
前半は、市場経済化と夫婦問題を非常にリアルに描いていて、現代中国の一面が垣間見られます。
対照的に後半は、次第にエスカレートする妻の狂気の演出が本当に恐ろしくもあり、コミカルでもあり、切なくもあり…。
結婚生活で大切なことは何か？
林小楓の母親が自分の老亭主にこう言う場面が印象的です。
“其实, 在家庭的问题上, 在感情的问题上, 不能太较真儿了。厚道点儿, 宽容点儿, 糊涂点儿, 比什么都好。” （でも、家庭内ことや感情的な問題では、まともに受け止めすぎちゃダメね。ちょっと気遣って大目に見てあげる、あんまり黒白つけないで曖昧にしておくことが、何よりいいのよ。）
はいはい、そうですね。皆さんもくれぐれも、ご参考に！
中国の演技派男優で、「囲城」「英雄」などの映画やTVドラマで重要な役どころを演じた陳道明が、主演の宋建平を演じています。日本の俳優でいうと大杉漣っていう感じ。妻の林小楓を演じた蒋雯丽は、その優れた演技力で、結婚した女性の心の変化、感情の崩壊などさまざまな心理状態をたくみに演じ分けています。
出演；
陳道明
蒋雯丽 etc.
