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新上海滩(新・上海グランド) 
★★★☆☆


2007年1月から中国全土で放送され記録的視聴率を達成した大ヒット連続TVドラマ。原作は1980年に「男たちの挽歌」「グリーン・デスティニー」の周润发(チョウ・ユンファ)が主演して話題を呼んだ「上海滩」(こちらも連続TVドラマ)で、さらに1996年には張国栄(レスリー・チャン)と劉德華(アンディ・ラウ)主演の映画としてもリメイクされている超人気大作です。本編は、2007年、現代中国の人気俳優、黄暁明(huang xiaoming)の主演で再びTVドラマとしてリメイクされたもので、日本では2008年にTV東京系で放映され反響を呼んでいます。

ストーリーは
1930年代、上海の租界にはびこる商業主義と外国勢力の侵略、これに対して芽生え始めた愛国民族主義との葛藤…。物語は内憂外患孕む上海のこの大きな時代を舞台に始まります。北京大学でかつて学生の救国運動の指導者だった正義感に燃える一人の青年、許文強(xu wenqiang)がそんな状況下の上海駅に降り立ちます。雑然とした見知らぬ土地の街頭で、偶然目にした貧しい梨売りの丁力(dingli)と地回りヤクザのイザコザ。持ち前の正義感から丁力を助けたことで、その後二人は生死を共にと誓うほどのいわば義兄弟となります。そして、さらに二人は美しく可憐な女学生がヤクザたちに誘拐されかけている場面に遭遇。この黄暁明演じる許文強という青年、とにかくメチャ強くてカッコいいんです。香港映画みたいな活劇シーンの後にみごと女学生を助け出します。実は彼女は、上海の顔役、いわゆるマフィアのボス馮敬堯(feng jingyao)の愛娘馮程程(feng chengcheng)だったことから、この後、彼ら三人の間に友情、思慕が綾なす微妙な三角関係が生じる気配…。同時に、許文強丁力の二人は上海マフィアのボス馮敬堯の信頼を得て、この地、上海でメキメキと頭角を現していきます。
一方、馮程程の父親、地元マフィアを牛耳る馮敬堯のこの時代の立場の描き方も興味深い。列強諸国に侵略され尽くす租界地、上海の地で、いかに中華民族の尊厳を保てるだろうか 裏切り者は容赦なく撃ち殺す怜悧なマフィアのボスが時折り覗かせる愛娘への愛情と信頼する部下への庇護心…。馮敬堯は彼なりの民族尊厳のためか、上海工部華人理事の役職を手に入れたいがために西欧外国商会の社長を懐柔しようとしますが、所詮は彼らに利用されるだけだと悟り、やがて当時侵攻しつつあった後進の日本に傾いていく…。しかしそれが許文強の知るところとなり、対立する・・・。

主な配役は
許文強(xu wenqiang)=黄暁明 [愛国青年。愛国と恋の間で悩む。智謀と胆力の持ち主。]
馮程程(feng chengcheng) =孫儷 [許文強の恋人。馮敬尭の娘。許文強に命を救われる。]
丁力(dingli) =黄海波 [許文強の義兄弟。馮敬尭の部下になるが、許文強を慕う。]
方艶蕓(fang yanyun) =陳数 [許文強の学生運動時代の学友で元恋人。現在は馮敬尭の愛人。]
馮敬堯(feng jingyao) =李雪健 [上海マフィアのドン。商工会理事の座を狙う。]
祥叔(xiang shu) =魯継先 [馮敬尭の忠実な側近。]

新上海滩」は「悪い奴だけしか生き残れない」弱肉強食時代の上海を巧みに描いたハードボイルドスリリングな物語です。許文強は次々と残酷な運命の仕打ちに襲われ、悲痛な人生へと追いこまれてゆく…。国を愛し知性や才能に恵まれていながらも愛する者と敵対し孤独な戦士にならざるを得なかった彼の哀しい生き様。そして許文強と愛情と憎しみで繋がれた人たち…。抗うことのできない運命を生きる人々の“魂と魂が摩れ合う痛み”を見事に描ききったドラマです。
ストーリー展開も非常に軽快。叶わぬラブロマンス、兄弟愛と忠義にと…、中国全土がTVを見て涙した…。少し古い喩えになるけれど、それは「ゴッドファーザー」と「ロミオとジュリエット」を足して2で割ったような壮大なラブロマンスと言えるかもしれません(笑)。ただし、中国のドラマや映画では珍しくないかもしれませんが、DVDで見ると少々長いのが玉に瑕と思うのは小生だけでしょうか?42話で構成されているので、毎日1話ずつ見ても1月以上楽しめてしまいます(まぁ、いいか)。


なお、中国語は非常に清楚(qingchu)で現代的。わかりやすいと思いました。フランス人や日本人役の人まで完璧で速い中国語を流暢に話すのには、中国語を勉強する身の人間にとっては少し抵抗感を覚えはしましたが…(笑)。

監督:

出演;
    

李密

黄暁明
孫儷
黄海波 etc.