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蝸居(Dwelling Narrowness) 
★★★★★


TVドラマ“蝸居”は、2009年7~8月から一部の地方テレビで放映され評判となり、11月からは北京や上海などでも放映、全国的放映を望む視聴者の声が高まっている作品です。
蝸居”は現代中国で流行りの一種の造語ですが、文字通り「蝸牛(かたつむり)の住まい」を指し、英語の題名からも推察して「狭苦しい家」を意味するようです。

原作は、2007年12月に出版された同名の小説『蝸居』だそうです。原作者はペンネームで、六六という女性。安徽省合肥市出身の女流作家で、1995年に安徽大学国際貿易部を卒業した後、国際貿易に従事した後、1999年にシンガポールへ移住、現在はシンガポールで幼児教育に携わっているそうです。

その彼女が中国でますます深刻化する住宅問題に一石を投じたのが小説『蝸居』であり、TVドラマ“蝸居”です。当初は全35話で放映されていましたが、ドラマの中の台詞に性的な表現や官僚汚職、差別的表現が含まれていたことから一部を削除した上で全33話に再編集したものを放映しているそうです(確かにYou Tubeでは33話建て)。

中国語の発音が、どの俳優もとても明瞭でスピードもそんなに速くありません。とくに海藻とその愛人の高級官僚市書記の宋思明の台詞が穏やかで気持ちいいです。そして中盤から後半にかけては宋思明の妻を演じる邬君梅がさすがに存在感があります。妻としての台詞も興味深いものがあります。お楽しみに!

ストーリーは
ストーリーの始まりは1998年、長江が海へ流入する河口の三角州に繁栄する大都会“江洲(架空の地名、どうやら上海をイメージしている)が舞台。复旦大学を卒業したばかりの郭海萍は、故郷に帰らず江洲に残って働くことを決意。少しでも早く頭金を貯めてマンションを購入することを夢見て、恋人でもあり同級生でもあった蘇淳と、広さわずか10数平方メートルという小さな部屋で同棲生活を始めます。そして1年後に結婚するも、マンション資金を貯めるまではと広い部屋を借りるのも我慢、そのままトイレと台所は隣人たちと共有という新婚生活を続けます。苦しい生活が5年を過ぎた頃、二人には子供が生まれます。そこからさらにマイホーム探しに焦燥する郭海萍。晩ご飯は乾麺かカップ麺で節約する若い夫婦だが、住宅市場は高騰を続け、ホワイトカラーの二人の昇給はまったく追いつかない…。いつしか二人には喧嘩が絶えなくなります。

一方、郭海萍の7つ年下の妹海藻は、不動産開発会社に勤めるホワイトカラーで、ボーイフレンド小貝と結婚を前提に同棲中。しかし喧嘩が絶えない姉夫婦を見ているうちに、いつしか結婚生活に疑問を抱くようになります。ある日、姉郭海萍の購入マンションの頭金の不足分を工面するために、市政府書記宋思明から借金することになり、気が付くと彼の愛人になっていました。そして、妊娠…。

ストーリは郭海萍夫婦、郭海萍姉妹を中心に展開しますが、周辺のさまざまな人間関係や心のすれ違い、機微がていねいに描かれていて共感します。
たとえば妹海藻の愛人高級官僚宋思明の熟年夫婦、宋思明海藻と一夜を過ごして帰宅すると、妻がドアを開けたままトイレに座っている…。「だって、家には他人はいないからいいじゃないの」と。ああ、だから外に愛人つくってもいいんだ…。なんて、変な道理で、ちょっと笑えてわかります(笑)。
海藻の勤める不動産開発会社社長と市書記宋思明の微妙な賄賂のやりとりも、ふう~むと意味深長…。宋思明の「住宅価格は経済の指標であり、下落は経済の停滞を招く」という論理も、まあ一理はあるでしょう。でも、だから業者と結託して、不動産価格を吊り上げるにも程合いがあるはずです。
中国ではもうすっかり有名な拆迁(chai qian)≒強制立ち退きをめぐる住民と業者、行政との交渉もシビアです…。

ドラマが好評を博しているのは、登場人物の誰にも偏重していないからでしょう。
立ち退き拒否の貧しいブルーカラーの庶民の考え方、よくわかります。
稼ぎの少ない夫を責める郭海萍の厉害な無理難題もわからないでもありません。
本来、温厚で理性的な成功者、官僚宋思明の50を前に愛人に失った青春を求める気持ちも理解の範囲。年上の権力者に魅せられていく海藻の心情も共感できます…。

話題の作品です。現代中国の足跡を知る上でも、是非お薦めします。

監督:

出演;
    

滕华涛

海清
张嘉译
邬君梅
文章
etc.