事故が起きてからすでにかなりの年月が経っていますが、 笹子トンネル天井板崩落事故 を 覚えておられる方は 多いのではないでしょうか。ボルトで吊られた1トンを越える重量のコンクリート製天井板 約270枚が 140mにわたって崩落し、走行中の車複数台が 巻き込まれ、9人の方が 亡くなってしまった事故です。


 トンネルを管理運営する会社では、天井板を吊っているボルトなどの定期点検を毎年、また、詳細点検を5年毎に行っていたということです。
 直前に行われた詳細点検で「問題無し」と結論づけられていた天井板であったにもかかわらず、なぜ 天井板崩落事故は 起こってしまったのでしょうか。点検時に 吊りボルトが落下していることが あったにもかかわらず、なぜ 落下していないボルトの状態は チェックされなかったのでしょうか。
 事故後の検査では、1000本にものぼる 吊りボルトの不具合が 指摘された そうです。


 そんなひどい状態を放置という信じ難い“安全管理”なぜ行われたのか、当時は大きな疑問でした。


 しかし、所属していた組織(世間では優良と評価されている会社)で、安全課の課長交代を契機として 安全管理が形骸化し、それが放置されてしまうのを 目の当たりにし、この事故は 驚くに当たらないのではないか と 思うようになりました。


 事故は一旦起こってしまえば、被害者やその家族の方々が悲惨な状態に陥ってしまうのみならず、加害者側の方々も不幸な状態に陥ってしまいます。
 様々な安全を守るための仕組みは、過去の多くの悲惨な事故から学ぶ中で構築され、事故発生防止に貢献してきたわけですが、その仕組みを形骸化させてしまっては、防ぎうる不幸をまたしても生み出すことになってしまいます。


 重大な事故が発生すると 公的機関による調査が行われますが、その多くは“過失”の有無を明らかにする(“過失”証明の)ためのものであり、安全管理の形骸化を生み出す風土形骸化していったプロセスなどの 根本原因の究明や対策につながる中身が “見える化”されることはありません。従って 形骸化によって引き起こされる事故全般の再発防止には つながりにくいのが 実情です。


 そこで、私の経験した、また、見聞きした形骸化事例を具体的事例として“見える化”してまいりますので、他山の石として、職場で 安全を守るための仕組み形骸化防止に 活用頂ければと思います。


            2017年12月2日 形骸化防止プロジェクト


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