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赤壁(Red Cliff) 
★★★★★


ハリウッドの呉宇森(wu yu sen=ジョン・ウー)監督の「赤壁(chi bi)」は、皆さんよくご存知の中国の四大古典小説の一つ、羅貫中の『三国志演義』を基に、その前半の見せ場「赤壁の戦い」に題材を得たアクション映画です。梁朝偉(トニー・レオン)、金城武胡軍(フー・ジョン)、中村獅童林志玲…、香港、台湾、大陸、日本、アジアの俳優たちを豪華絢爛に配した全編5時間近くにわたる大作で、二部編成で2008年と2009年に分けて上映。日本でも2009年4月10日からいよいよ第二部が封切られました。

小乔を演じた台湾のモデル出身でMCの女優、林志玲は当作品を以下のように紹介しています。
「如果你想了解中国人的智慧, 如果你想看看人性的交流, 如果你想看看英雄们的勇气, 这是一个你我都熟知的历史故事, 它有血有泪, 有爱情有友情有勇气, 所以都是我们值得去看的一部充满英雄风云时代…。」
(この作品をご覧いただいたら、きっと中国人の知恵に触れ、人間としての心の触れ合い、そして英雄たちの勇気を感じていただけるでしょう。「赤壁」は周知の歴史物語ですが、戦闘あり涙あり、そして愛情、友情、勇気を描いた一見の価値ある英雄たち風雲急を告げる一大時代物語です。」

いわゆる『三国志演義』だと思って見ると、いい意味()で裏切られたような気がします。いい意味であまり中国臭くない(笑)。音楽が岩代太郎さんなのも、中国っぽくないトーンを醸し出している理由の一つかもしれません。だいたい金城武がナマズ髭生やして諸葛孔明を演じるなんて信じられませんでした!! でも孔明って、結構こんな若造だったのかもしれませんけど…。『三国志演義』を全然知らない人、興味のない人が見ても、娯楽映画として非常に楽しめますよッ


ストーリーは
時代は東漢(日本風にいうと後漢)末年、西暦208年、東漢の丞相張豊毅(zhang feng yi)扮する曹操(cao cao)は天下統一を掲げて80万の大軍を率い征討に赴く…。この征討に、おなじみの関羽張飛趙雲ら活躍で何とか窮地を逃れた劉備軍でしたが、敗北は濃厚です。軍師の諸葛孔明は曹操軍の脅威に対抗すべく、孫権軍との同盟を進言し孫権(sun quan)のもとへ向かいます。若くして覇権を継承した孫権のまわりには、曹操に降伏するべきだという意見が大半を占めていましたが、孔明孫権軍の司令官、トニー・レオン(梁朝偉)演じる周瑜(zhou yu)と出会い、次第に信頼関係を築き、同盟が実現することになります。
中国史上、少数をもって大軍に勝った戦い数あれど、三国時代の「赤壁の戦い」に勝る戦さなし。なぜならこの戦さにはたくさんの物語が含まれているからです。劉備孫権軍の連合軍はわずか5万。数の上で圧倒的に不利な連合軍は、亀の甲羅をヒントにした奇襲“八卦陣(古代八卦占いには亀の甲羅が用いられたことから、亀の甲羅型の陣を取る陣法をこう呼んだ)”で曹操軍の騎馬隊を迎撃、見事に撃破します。
でも、依然勢力の衰えない曹操軍は、2000隻もの船を集め、決戦の地、赤壁へ向かおうとしています…。

第一部は、広大なスケールと最新技術を用いたダイナミックな戦闘シーンに圧倒されました。多士済々の登場人物、英雄たちの性格個性を説明する必要もあったのでしょうが、これだけで見終わってしまうと何だか消化不良ぎみでしたけど(笑)。
中村獅童
扮する周瑜の部下の大将甘興は、盗賊の出身。第一部では甘興の手下が近隣農家から水牛を盗んだことがバレて、でもその時周瑜は彼らの中の特定の個人が盗みを働いたことを追求しようとはしませんでした。このエピソード、単に周瑜の人間性の温かさを説明するためだと思っていたら、第二部で甘興周瑜の心意気に応えて玉砕覚悟の突撃をするところに繋がっています。
実はこの甘興 、もともと日本から来た倭寇(ちょっと時代が違いますけど)のような海賊だったなんていう設定だったりして…。だからジョン・ウー監督は日本人に演じさせているっていうのは深読みでしょうか
中村獅童さんの中国語、当教室の林老師曰く「吹き替えしてないと思う。一部では気が付かなかったけど、二部ではセリフがちょっと硬い感じがしたから」ですって。まあ、聞いてみてください。実際、彼のセリフは火攻めの爆弾(?)造りで部下に「这么大点儿」「这个好」「没问题」…,というようにいたって簡潔。歌舞伎役者だけに立ち居振る舞い、戦闘シーンは様になってます。

第二部、冬節の日。決戦を前に孫権,劉備軍の連合軍では汤圆(tang yuan)を全兵士に振舞います。古代の中国では現在の元宵節同様、冬至の日に汤圆を作って一家団欒で過ごす習慣がありました。特に孫権の治めていた江南(現在の上海)地方では盛んで、これを親友、親戚に配る風習があったようです。
映画の中では、この振舞われた汤圆甘興をはじめ趙雲胡軍が演じてますが、これまたマッチョでカッコいい!)ら大将たち、そして劉備孫権までもが次々と総司令官の周瑜の椀に一粒ずつ汤圆を分け入れるシーンがあります。日本ならまるで「固めの杯」みたい 本来家族と過ごすべき大切な冬至に、戦場で生死を共にしようとしている同志、兵士たちとのいわば「大家族」の絆としての汤圆を共に食らう…。
当時は冬節(冬至)の訪れとともに歳を数えたそうですから、私たちの正月の雑煮のような位置づけの小吃(xiao chi=軽食)でしょうか。

また印象的だったのが、夜空に無数の孔明灯がゆらりゆらりと星のように舞い上がるシーンです。曹操がチフスか何かの伝染病で大量に死んだ自軍の兵士の遺体の山を、筏に乗せて河に流し伝染病を敵陣に蔓延させようと計ります。危機一髪、諸葛孔明の機知で曹操の策略を見破り、敵兵ながら死体を荼毘に付すのですが、この時、夜空を彩る悲しみの灯篭が孔明灯。日本の灯篭流しの大空バージョンで、壮観です。
名前の由来は、彼が平陽で司馬懿に包囲され、救援を呼ぶため風の流れを予測し、紙の灯籠を作って空に放ち難局を乗り越えたという救援説や、孔明が被っている帽子に形が似ているからなど諸説紛々。
この孔明灯、“天灯” “願孔明灯” “祈福天灯”などとも呼ばれ、近年まで農村で豊作願いに元宵節などに上げられていたようです。それが「赤壁」人気で上海など都市部でも上げられるようになったとか。右写真のように小さな 紙製の熱気球で、点火して5分ほどで上昇を始め 暗い夜空に消えていきます。“七夕情人節”の願い事にも使われ、“願愛灯”とも呼ばれているそうですよ。

この作品の中では「女癖」のよくない卑劣で非情なリーダーとして描かれている曹操(大陸の俳優、張豊毅が演じています)ですが、実際には、それまで雑芸としか見られていなかった文学の地位を、後に「建安文学」と呼ばれるまでに向上させた一翼をになったほどの文才の持ち主です。作品中でも、いよいよ決戦の夜、張豊毅が口ずさむ場面があります。曹操の作品とされる有名な「短歌行」。

對酒當歌 酒に対して当に歌うべし
人生幾何 人生 幾何ぞ
譬如朝露 たとえば朝露の如し
去日苦多 去りゆく日 苦多し
慨當以慷 慨して当に以って慷すべし
幽思難忘 幽思 忘れがたし
何以解憂 何を以ってか憂いを解かん
唯有杜康 ただ酒あるのみ

三国志演義で「中国人も日本人と同じだな」と思ってしまうのは、諸葛孔明劉備は人気があるけど曹操は仇役に描かれやすいところでしょうか。三国鼎立の中で歴史的には曹操が一番成功したのに…。知り合いの中国人が「曹操や毛沢東は成功したから悪く言われるけど、劉備は永遠に成功しないから人民から永遠に愛されるんだよ(笑)」って言ってました。中国人にも判官贔屓はあるんですね(笑)。
曹操の建国したの「魏志倭人伝には、ご存知のように日本の3世紀、邪馬台国卑弥呼の時代の記述があります。思えば、三国志の時代に倭国、日本は曹操の魏王朝へ朝貢していたんですね。

監督:
脚本:


主演;










音楽

呉宇森
芦葦
鄒静之

梁朝偉
金城武
張豊毅 
張震
赵薇

胡軍
中村獅童
林志玲
尤勇
佟大为etc.

岩代太郎