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侠侣
★★★★☆


2006年から中国全土で放送され人気を博した大ヒット連続TVドラマです。
新上海滩」で、すっかり黄暁明(huang xiaoming)の男前振りに惚れ込み、「新上海滩」からさらに1年遡る本作品を見ることになりました。中国ならでは武侠物語ですが、主人公黄暁明扮する杨过(yang guo)と清純派女優劉亦菲(liu yi fei)扮する小龙女の広大なるラブロマンス構成で、女性ファンを釘づけにすること請け合いです。実際、この二人の主人公って、中国の若者たちの間では「理想の恋人」と捉えられているんですって(笑)。でも見ているうちに、黄暁明って「暴れん坊将軍 吉宗」の若き松平 健に似てません?劉亦菲 って、今の松田聖子をふた周りくらい若くした感じ?なぁ~んて思ってしまったのは、年齢のせいでしょうか? でも、とにかく二人はカッコいいです!
もちろんストーリーだって、黄暁明扮する杨过に降りかかる試練とそれに対するカタルシスの量が半端ではありません。だから余計に面白さや視聴後の爽快感が増幅されるのでしょうか。全編を通して中国本土四川等の景勝地で撮影されたそうで、美しい映像も本作品のお奨めどころです。

全体の印象としては、日本のNHK大河ドラマと冒険ファンタジー「ハリー・ポッター」が一緒になった中国バージョンという感じでしょうか。ただし、連続TVドラマですから、全編43話。「新上海滩」同様、とても長いです!

原作は中国大陸及び中国語圏で絶大な人気を得ている著名作家、金庸(jin yong)の三部作の第二作目です。1959年5月20日より、香港の『明報』で連載が始まり、完成には3年を要した大作。金庸という作家も興味深い人物ですので、最後に略歴を紹介しておきましょう。

その前に、まずストーリーですが、
13世紀前半、金庸の前作「射雕英雄伝」から10年後の続きの物語。でも、「射雕英雄伝」を読んだり見たりしてなくても、ドラマは十分楽しめますからご安心。
舞台は、(この民族、後にはどうも清朝を起こした満族のようです)に代わって蒙古南宋を脅かしつつある時代です。売国奴として悲惨な最期を遂げた杨康の息子杨过が、「売国奴の子」という汚名を背負いながらも、数々の悲劇を乗り越え、一代の侠客へと成長していく姿を、師である小龙女との当時の倫理観からは到底許されない愛を絡めつつ描いています。
主人公杨过が人間的に成長していく様子を、恋愛に主軸を置きながら描いています。師弟間の恋愛が禁断とされた時代、杨过は師である小龙女と恋に落ちる…。そんな二人を保守的な道徳観念を持つ世間は決して許さず引き裂こうとします。でも、二人はそれに屈せず、様々な苦難に立ち向かい、一途に愛を貫こうとします。杨过小龙女の純愛を中心に、物語の中ではいくつもの愛憎劇が鏤められていきます。燃え盛る炎のように気性の激しく真っ直ぐな杨过と、俗世から隔離されて育ち、澄み渡った水のように透き通った清新な心を持つ小龙女。性格の全く違う二人の恋に加えて、郭靖黄蓉の夫婦(彼らは中国では「理想の夫婦」として憧れの対象となっているんですって)等、前編「射雕英雄伝」の主要人物の引き続きの登場するのも面白い。また、南宋を滅ぼそうとする蒙古の野望とそれに対する人々の抵抗が描かれて、歴史物語としても大いに楽しめます。

原作者
金庸(jin yong)とは

小説家金庸(1924年6月6日~)は、香港の『明報』、シンガポールの『新明日報』の創刊者でもあります。中国武侠小説界を代表する作家で、その作品は中国のみならず、世界の中国語圏で絶大な人気を誇っています。本名は査良鏞Zhā Liángyōng )。ペンネーム金庸は、「」の字を偏と旁に分けたものだそうです。
出身は浙江省海寧県袁家鎮。当初は外交官を目指し、中央政治大学(現・台湾の国立政治大学)で外交について学びましたが、不正に抗議した舌禍事件が原因で退学を余儀なくされました。その後、杭州の『東南日報』で取材記者や英語の国際放送受信の担当。さらに『大公報』に採用され、香港支社に派遣されます。『大公報』の娯楽紙面『新晩報』が創刊されると、『下午茶座』の編集担当となり、林歓のペンネームで映画評論の執筆を行ないました。

その頃、大陸では共産党政権が誕生。金庸は単身北京に赴き、外交官として採用するように申し出ました。しかし、金庸の思想が共産党と相容れないものだったために、この申し出は拒否されます。さらに、彼の父親が反動地主として逮捕される事件も起こります。

外交官への夢を諦めた金庸香港に戻り、記者として復職しました。1955年、『新晩報』に第一作『書劍恩仇録』を発表。これを皮切りに、一躍武侠小説の人気作家に。1959年には在籍していた『大公報』の左傾化への反発から独立、中道日刊紙『明報』を創刊します。以降、『明報』に社説と武侠小説を毎日執筆連載、人気作家としての地位を不動のものとすると共に、かつて在籍していた『大公報』等左翼系各紙と、共産党の施政を巡って激烈な論争を繰り広げます。

香港の中国への返還が決まると、香港基本法起草委員会の委員に中国側の推薦で任命されましたが、返還後の香港の政治体制について、金庸が示した方案は香港の政治的安定を優先させるがゆえ、中国側の意向に沿ったものだったため、民主派から激しい非難を浴びてしまいます。
ところが、1989年に天安門事件が発生するや、金庸は抗議して即座に委員を辞し、再び世間を驚かせました。

その後、金庸は『明報』を辞し、持ち株の大半を売って引退。しかし、引退後もオックスフォード大学の客員教授に選ばれたり、香港特別行政区準備委員会に香港側の委員として参加するなど、その活動は衰えません。1999年より故郷、浙江大学の人文学院長を務めてもいます。

監督:

出演;
    
于敏

黄暁明
劉亦菲 etc.