東京港区 中国語サークル 北京倶楽部

「东倒西歪」「东奔西走」「东拉西扯」…四字熟語。


最近の宋老師、「中級」クラスの作文学習で、以前より頻繁に成語(四字熟語)を引き合いに出されるようになった気がします。それって、私たちの汉语水平有了进步? ってこと

成語は日本人にとって、かつて「漢文」として学び、日本語として取り入れて来た経緯があり、日中共通なものも多く、目で読む限りは一見、興味深く親しみやすく感じられます。でも実際は、それぞれに出典、故事来歴があり、それを知らない日本人は日本語の中で、ちょっと違った意味合いで使っているものも少なくありません。

たとえば、“卷土重来(juan tu chong lai)”[捲土重来 けんどじゅうらい]
我が国でも、最近選挙で敗北したどこかの党の総裁が「次期に捲土重来を期す」とか述べていたようですが、中国では、“卷土重来”はどちらかというと「良くない勢力が巻き返してくる」という場合に使われているようです。中国では“卷土重来”より“东山再起(dong shan zai qi)”を使うようです。
なぜなら、“卷土重来”の出典は杜牧唐詩で、
劉邦に敗れ烏江亭で自害してしまった項羽。もし根拠地の江東に帰っていたならばどうだっただろうか。江東の若者は優れた者が多いから、土を巻き上げて再起を図ったなら、必ずや勢力を盛り返して再び天下を争うことができたかも知れないのに…」から、といわれています。中国人の崇める祖、漢民族の創始者の敵方であった項羽は、彼らからすれば「良くない勢力」の位置づけなのかもしれません(笑)。

で、外国人としての私たちは、故事来歴の深い成語はボチボチお付き合いするとして、初心者成語を少しずつ使えるようになりましょう。今日は、「東西南北」にまつわる成語です。

きっかけは、作文の設問「激しい雨風は木々まで倒すほどだった」
これをQさんは「暴风雨刮得小树都弄倒了」と訳しました。
正解です。
でも、宋老師は 暴风雨刮得小树东倒西歪 とすると、「もっと美しい文になる」と言いました。

东倒西歪(dong dao xi wai)≒柱状のものが、いろいろな方向にバラバラに倒れているさまです。

同様に東西を含む成語には以下のようなものがあります。

东奔西走
(dong ben xi zou)≒あっちこち奔走する
东张西望
(dong zhang xi wang)≒あっちこちキョロキョロすること
东拉西扯(dong la xi che)≒あっちこっちから寄せ集める→話や文章がとりとめないこと
东拼西凑(dong pin xi cou)≒あっちこっちから寄せ集める→無理算段する
东食西宿(dong shi xi su)≒あっちこっち只で寝泊りさせてもらう

一方、南北を含む成語もあります。
南辕北辙(nan yuan bei zhe)≒車の轅(ながえ)は南に向いて、轍(わだち)は北に向いている→南に行こうとして北に向かってしまうこと→結果が矛盾する逆のことになってしまうこと
南征北战(nan zheng bei zhan)≒あっちこっち転戦する
南腔北调(nan qiang bei diao)≒あっちこっちの訛りが入り混じる→訛りがひどい

東西、南北を含む成語には、どうやら「あっちこっち」「ばらばらに」何かをする、何々の状態にある、という意味を含むことが多いようです。

成語
は連発すると鬱陶しいですけど、ここぞという場面に一箇所使うと、ピリリと格調高く引き締まってきます。使えなくても、読んだり聞いてわかれば、まあいいか…。