3章 建替え運動の再出発
写真説明
 2015年1月11日、団地のお祭で、ブリリア多摩ニュータウン初のどんど焼きです。
この時間帯は、点火前のまだ餅つきで、ちぎり餅に、多くの行列が並びました。
建替え前のお祭りより格段に多い人出で、お手伝いに、新住民が多く参加してきました。
団地には新しく若い人と子供が増えたが、確実に新たなコミュニティーが生まれています。
ハードの建替えは終わり、ソフトの地域づくりが確実に進行しています。


 
 これから先は、「諏訪2丁目住宅マンション建替え組合」がまとめるものと思われますので、
管理組合総会議案書を資料にして、簡単に年表風に書いていきます。資料集と思って目を通してください。

(1)新たな基本計画の策定に着手する

2004年(平成16)5月 第34回総会 「諏訪2丁目建替え推進決議」
 建替え運動の再出発となる重要な決議だったので、以下全文を掲載します。

『2 0 0 0年(平成12年)総会決議の「(公団作成の)3つのゾーニング案に基づく建替え推進決議」を
経済情勢の変化の中で実現困難となったため廃案とする。
今後、この間の諏訪2丁目の建替え運動の蓄積を生かし、段階的棟別建替えも含めた実現可能な建替え手法を研究し、
3年をめどに基本計画・実施計画を作成し建替えを推進していく。
建替え推進のために「優良建築物等整備事業」補助金を申請し、住民負担の軽減を図り、コンサルタントに業務委託し、
実現可能な手法の調査研究、組合員の意向調査基本計画の作成を推進していく。
 以上を決議する。』

 ここで重要なのは、当時は「段階的棟別建替え」も視野に入れていことです。廃案とする公団作成の3つのゾーニング案にある、
存地ゾーンという将来建替えるゾーンという考え、を踏襲していた。もうひとつ重要なことは「優良建築物等整備事業」補助金の申請を
するとしたことで、決議以前から多摩市から補助金支給の内諾を得ていたことです。この年は800万円の補助金が支給されて、
組合は旭化成ホームズをコンサルタントとして1260万円の業務委託費を支払っている。また注目すべきは、期限を3年間に限定し、
建替え事業の中で住宅耐震補強検討業務も140万円かけて行っている。つまりたんに建替えだけではなく、住宅改造も検討した。
 またコンサルタントの方も、基本構想第1次案・第2次案と矢継ぎ早に提案し、住民アンケートを取っていく。

2005年(平成17年)5月 第35回総会
 「諏訪2丁目住宅管理組合規約」の全面改正を決定する。
この年度にコンサルタントの旭化成ホームズは、ワークショップや、号棟前芝生周回を重ねて、基本構想第3次案を提出した。

2006年(平成18年)3月 臨時総会 
 『ワークショップ、個別面談を踏まえ、一括建替えを基調とする「第3次基本構想案」を検討し、
建替えを更に推進するために基本計画案作成に着手する方針を確認する決議』を採択する。

 この決議とともに2号議案として、『基本計画案作成のために、引き続き「優良建築物等整備事業」補助金を申請し、
住民負担の軽減に努める決議』をしている。これはこの補助金をめぐって、組合員で訴訟マニアとしか思えない人物から、
管理組合理事個人と、補助金を交付した多摩市が訴えられていたことから決議した。また3号議案として、
理事個人が訴えられたので、その裁判費用一切を管理組合が負担する決議も行った。
 この訴訟については、同年5月の通常総会で「建替えに関する2件の民事訴訟に対して一審勝訴しました。」
と報告されており、最終的にも全面勝訴した。


2006年(平成18年) 8月
 「諏訪2丁目住宅管理組合 事業協力者選定専門委員会運営要綱」を制定。
事業協力者(デベロッパー)の選定は、公平・中立であることが必要で、そのためにこの要綱を作った。
後にこの要綱に準じて、コンサルタント・設計事業者・建築業者(ゼネコン)が、管理組合によって選定されていった。
業者選定という非常にデリケートな問題を取り扱う要綱で、建替え事業の成功のためには重要だったと思う。
要綱の中から(委員)の条文を抜粋して以下掲載する。

『第5条(委員)
委員会の委員の構成及び定数は次のとおりとする。
一 理事会の理事長、副理事長、建替え担当理事の内1人、及び監事の内1人
  の4名
二 建替え委員会の代表委員及び役員の内の3名
三 区分所有者のうち、公募による者2名
四 区分所有者以外の、建替え事業に専門知識を有する者で、理事会の指名を
 受けた者3名
前項一、二、四の委員は、理事会の指名により定める。前項三に定める公募に
よる委員は、応募数が定員を上回る場合には、理事会において抽選をおこない
定めるものとする。
委員が欠員等により定数を下回った場合には、1項一号の委員の場合は理事の
うちから、1項二号の委員の場合は建替え委員会の委員のうちから、理事会の
指名により補充するものとする。また1項三号の委員の場合は、新たに公募を
行うものとする。なお、1項四号の委員の場合は、その対応は理事会の協議に
より決するものとする。
委員の任期は、2年間とし、再任を妨げない。』


2006年(平成18年)12月 都市計画「一団地の住宅施設」を廃止する。
 これについての翌年5月の通常総会で報告している文書を以下掲載する。

『4 UR都市再生機構と協議し、境界線の整備や、建築基準法86条に関連する問題の整理を行いました。
 地区計画については、多摩市は、東京都、地区自治会・管理組合とも協議し、
06年12月「多摩市都市計画一団地の住宅施設多摩ニュータウン多摩第1団地の住宅施設」を廃止し、
諏訪地区地区計画を決定しました。』

 ここに建築基準法86条の問題が述べられている。これが難物で、後でわかった事だが、
民営化されたUR都市再生機構にはもはやこの問題を解決する力はなかった。後に選定されたコンサルタントと設計事務所は、
この問題の解決のために、粘り強く東京都の建築指導事務所と交渉を重ねなければならなかった。
この問題の解決が報告されるのは、2009年(平成21年)5月の第39回通常総会議案書であり、
建替え決議の直前まで協議が重ねられていたことがわかる。

2007年3月 臨時総会を開催する。
 ここでコンサルタントが作成した基本計画が最終決定されて、事業協力者(デベロッパー)選定専門委員会が設置された。
委員会は東京建物を選定し、理事会はこの結論の住民説明会をした上で、37回通常総会の議案とすることを決定した。

(2)圧倒的多数で「建替え決議」が成立する

2007年(平成19年)5月 第37回通常総会
 この総会では、事業協力者(デベロッパー)を最終決定し、
引き続き、管理組合がコンサルタントと設計事務所を選定していくことを決議する。

 基本計画はコンサルタントである旭化成ホームズが作成したが、事業協力者を公募した結果、
面白い現象が現れていた。
コンサルタントが作成した基本計画はURが作成した基本計画と同じく、敷地を分割して売却する案だったが、
公募に応じた案は、旭化成ホームズを含めて、すべて敷地を分割せずに建替える案だった。
これはおそらく、基本計画策定時と事業協力者(デベロッパー)の公募時期の経済情勢の違いからだろう。
事業協力者として公募に応じた旭化成ホームの資金計画は、旭化成ホームが自ら作成した基本計画よりは管理組合に有利だった。
これは経済情勢が好転していたこともあるだろうが、公募という競争原理が働いた結果でもあろう。

この37回総会の議案を以下掲載します。

『第2号議案
諏訪2丁目住宅建替え事業」の事業協力者として「東京建物(株)」を選定した理事会の決定を承認する。
今後、管理組合は「建替え決議」に向けて、区分所有者の合意形成に努め、
建替え事業を「東京建物(株)」・コンサルタント等と協議して進める。
(提案理由)
1 事業協力者は本年3月臨時総会で採択された「事業協力者選定専門委員会」 答申を受けて理事会で協議し、
事業協力者候補第一位の東京建物(株)を通常総会で提案する。
2 建替え決議に向けた住民合意形成と、区分所有法に定められた建替え決議要件作成のために
コンサルタントに業務委託する。コンサルタントは従前の 旭化成コンサルタントと同じように、理事会が決定する。

3 設計事務所は、選定コンペを行い、選定後、理事会が決定する。』

 管理組合は当初は、業者選定は事業協力者のみだと思っていたが、その選定作業の中から、
コンサルタントも設計事務所も自ら選定するものだと学んでいった結果の議案です。
コンサルタントはそれまでの旭化成ホームズが自ら事業協力者に応募したために空白になっており、
新たにシティコンサルタンツが選ばれ、設計事務所には松田平田設計が選定された。
プロポーザルコンペにより選定しており、NPO法人「たま・まちせん」にその事務局を業務委託して行った。

2007年(平成19年) 「建替え委員会」の業務を終了させて、「新たに建替え決議実現委員会」を発足させる。

 「建替え委員会」は全員合意の組織であり、しかもだれでも参加できて、建替え不賛同者も含む組織であった。
区分所有法改正前の全員合意の建替えを前提としており、しかも目的条項も建替え検討に止まっていたため、
その任務は終えたとして、業務を終了させた。そして、新たに建替え決議の住民合意形成を目的とする、
管理組合内の各種委員会として「建替え決議実現委員会」を発足させた。
この運営要綱は2008年(平成20年)5月の第38回通常総会に報告されている。


 2008年(平成20年) リーマンブラザーズ倒産。リーマンショックが世界経済を揺るがす。
 このリーマンショックにより、事業協力者である東京建物は、当初の経済的な約束が果たせなくなったとして新たな提案が出された。
組合員にとっては、建替えに必要な経済的な負担が、1戸あたり500万円増える提案であった。

2009年(平成21年)5月 第39回通常総会
 「諏訪2丁目住宅建替え事業の継続について」を採決する。
東京建物の新しい提案は、組合員にとりショックではあったが、それでも説明会等を重ねる中で、
建替え事業を継続する声が大多数であり、この決議の提案となった。以下その議案を掲載する。

『第3号議案      
   諏訪2丁目住宅建替え事業の継続について

 諏訪2丁目住宅管理組合は09年(平成21年)4月に提案された、新しい条件に基づく、
諏訪2丁目住宅建替え実施計画案を作成し、年度内に1日も早く「建替え決議」を実現する。

提案理由
経済情勢の大きな変動に伴い、事業協力者である東京建物(株)は今年3月に、新しい条件を提示した。
 今年4月諏訪2丁目住宅管理組合理事会は、東京建物(株)の提案に基づく建替え事業の「事業フレーム説明会」を開催した。
 今後、コンサルタント・設計会社の協力の基に、住民の意向を調査して、反映させるべき事項などに基づいて、
組合員が納得できる実現可能な計画を作成する。』


2010年(平成22年) 3月28日 臨時総会で建替え決議が採択される。
賛同率は全組合員の92パーセントであった。

同年7月 「建替え組合設立認可申請」を東京都に行う。
同年12月9日 同上申請が認可される。
同年同月23日 建替え組合設立総会が開催される。

2011年(平成23年)5月 第41回通常総会
 この年の総会議案書から、建替え組合の設立に向けて動きの激しかった、平成22年度の業務報告を以下掲載します。

『建替え関係
1.建替組合の前身どなる、建替発起人会と建替え事業実現委員会を組織し、発起人会32回、実現委員会7回を開催しました。
その間の活動として、建替組合規約検討や各種調整、住民へは「今後の進め方説明会」など各種説明会、
近隣住宅へは建替事業についての「近隣説明会」などを行い、理解と協力を得られるように進めてまいりました。
そして平成22年12月23日の建替組合の設立に至りました。
2.共用施設検討委員会を組織し、再建マンションの共有施設「コミュニティカフェ」の運営業者候補として
「多摩草むらの会」を選定し、建替組合に継承しました。
3.仮住い引越し委員会を組織し、以下の主な活動を行いました。
  ・UR,JKKと建替組合との法人契約に関する調整(入居要件め緩和、割引など)
  ・UR山崎団地見学会、UR,JKK,民間不動産業者を招いての仮住い説明会の開催
  ・ 多摩市ごみ対策課を招いてのゴミの出し方説明会
  ・粗大ごみ受付窓口の設置(多摩市)
  ・ 空き物件、ゴミの出し晴報など各種情報コーナーの開催
  ・ 民間不動産協会による斡旋・相談会
4.「マンション安心居住推進事業補助金」を国・国交省に申請し、採択されました。
5.建替え事業の建設業者候補として「三井住友建設」を選出し、建替組合に継承しました。
6.多摩市、URと協議し、各種埋設管や境界線、各種条件などについて協議調整を行い、建替組合に継承しました。
7.「建替えニュース」を5回、「号外」で2回発行しました。』

 またこの41回通常総会では、第2部として「建替えにともなう管理組合解散手続き及び解散後の清算業務」
の議題を審議して、いずれも可決された。可決された議案は以下の通りです。

第5号議案 管理組合の解散に関する決議
 本管理組合員は建替え組合の権利変換期日をもって、今までの区分所有権が消滅して、
建物に専有部分がなくなります。したがって、その日をもって本管理組合を解散します。
第6号議案 清算人の選出
第7号議案 清算人の業務及び清算業務計画(案)

建替え事業はこれからが本番となるわけですが、以上で私の概要の報告は終わりとします。
 なお議案書に書かれている「仮住まい引越し委員会」は、管理組合の解散後は、
「仮住まい・引越し実行委員会」と名称を変更して、第1回委員会を2011年(平成23年)4月16日に開催している。
同委員会の活動のおかげで、同年6月末までの引越し大作戦が可能だったと思っている。
とにかく次々と発生してくる大量のごみ処理(再利用を含む)は、大仕事だった同委員会の「活動記録」は、
同年12月に発行されているが、ごく少数の部数しかないために、この記録の存在を知っている管理組合委員は少ない。
 また実現委員会とは、管理組合の解散以前は「建替え決議実現委員会」として活動していた委員会で、
正式名称は「建替え事業実現委員会」という。
この二つの委員会は管理組合解散後も、名称を変更して活動を続けた。


(3)管理組合の清算と訴訟について

(イ)管理組合の清算
 2010年(平成22年)12月23日の建替え組合設立総会後の主な動きは次の通りです。
2011年(平成23年)5月7日 建替え組合通常総会
         権利変換計画を議決する
同年6月30日  権利変換計画を東京都に申請
同年11月20日 同上が認可され、この日が権利変換期日となった。

 管理組合は、同年(2011年)5月29日の第41回管理組合通常総会第2号議案「修繕積立金の返還に関する決議」に基づいて、
権利変換計画申請時の組合員組合員に対して、申請後速やかに、一戸当たり111万円の修繕積立金の分配を実行した。
ところがこれに対して、分配を受けられなかった元組合委員より訴訟が提起された。
この訴訟は以前民事訴訟をした人物がかかわっていた。訴訟については、後ほどまとめて述べます。


2011年11月7日 管理組合 平成23年度臨時総会
 実質的な管理組合の解散総会で、管理組合解散の日と決めた権利変換日である11月20日までの
収支決算報告書が採択されて、清算人に引き継ぐ残余財産が確定して、清算業務に入った。
ところが、民事訴訟が終わらない限り清算を結了できないので、清算業務が長期間になってしまった。
それで、2012年5月27日の建替え組合通常総会に合わせて、「清算業務中間報告集会」を開催して、中間決算の報告をしている。
民事訴訟は最高裁まで行き、2013年(平成25年)1月31日に上告棄却の決定が出て、管理組合の全面勝訴となり、
清算業務が結了できる状態となった。清算業務結了報告集会は、建替え組合の通常総会の日にちに合わせて同年の5月27日に行っている。
清算業務に1年半を要している。2010年3月の建替え決議から、管理組合の清算結了まで3年かかっている。

(ロ)いくつかの民事訴訟について
 まず、2004年(平成16年)に「優良建築物等整備事業」補助金の申請と受給に対して、2件の民事訴訟がなされている。
被告は管理組合ではなく理事個人であった。それで弁護士費用などの裁判費用を、管理組合が負担できるように総会決議をしている。
2006年(平成18年)3月の臨時総会3号議案がそれである。その議案が詳しいので以下議案全文を掲載する。

『第3号議案
裁判費用を下記①及び②の方法で負担する決議

① 平成17年(ワ)第1 60 7号 損害賠償請求事件「いわゆる補助金不正申請・同行使訴訟」②平成17年(ワ)第!743号 
損害賠償請求事件「いわゆる名誉毀損訴訟」に係る裁判費用を、一般会計より支出する。

② 今後、組合の活動に係る訴訟(調停等裁判所での手続き一切を含む)に  対する裁判費用は、役員等の個人が被告等となった場合、
一時立替て支出する。判決確定後、総会にて支出の承認決議を行い精算する。但し、問題となった行為が、役員等の個人の故意、
または重大な過失によるものである場合を除く。

(説明)

①規約同等の効力を持つため、規約第47条3の一一「規約の制定、変更又は廃止」の条項の準用して、特別決議とする

②2件の訴訟事件に係る弁護士費用、交通費、通信費、書類コピー費用など、
裁判に直接必要な費用を一般会計・予備費より支出する。

③今後、組合業務のための行為に対して起きる訴訟については、管理組合業務 の遂行を確保するため、
被告とされた個人の負担とせずに、一般会計より費用を、一時立替て仮払い支出する。
その後、訴訟事件ごとに総会に説明提案を行い、承認決議を得て、正規の支出とする。
但し、問題となった行為が、被告となった組合員個人の故意、または重大な過失によるものである場合除く。

④また規約第75条に基づき、事後に総会の議決を経て、当該役員等の個人に 裁判費用を求償することがある。』

 この総会決議で裁判費用を個人負担せずに済んだが、この決議がまだ生きていて、またしても現在、理事個人が刑事告訴されており、
この決議を根拠に、もし裁判になっても個人の経済的負担なしに弁護士を選任している。
(管理組合は清算結了で完全に消滅したが、今後については建替え組合と精算人とで契約してある)

 もう一つは、2011年(平成23年)の修繕積立金を一戸当たり111万円を分配した時の訴訟である。要するに自分はもらっていないが、
自分に権利があるという訴訟で、清算結了報告集会に裁判の報告文書があるので、それを以下に記載する。

『第一審の経過
 平成23年10月10日に、元組合員の○○氏ほか3名より、管理組合は4名が所有していた3物件の修繕積立金を返還せよとの訴が
東京地裁立川支部になされ、清算人は西東京共同法律事務所の栗山れい子弁護士と佐竹俊之弁護士を代理人に選任して、争うことにした。
 裁判は12月1日と平成24年1月16日に開かれ、平成24年3月15日に判決が出て、管理組合の全面勝訴となった。
しかし原告ら4名は同月26日に控訴したために、裁判は引き続き東京高裁で行われる事となった。

 原告の主張と組合の反論
 建替え組合の設立認可時点の区分所有者に修繕積立金を返戻しなければならないのに、原告らには支払われていないので、
其々に1物件につき111万円を返還せよ。その他組合は違法・不当行為を繰り返しているという趣旨です。 
管理組合は、平成22年5月の第40回総会で、管理組合が消滅する都知事の権利変換計画認可公告時の組合員に、
修繕積立金を分配すると決議し、翌年の第41回総会で具体的な金額と、組合員の早期に分配を受けたいという要望に応え、
返還を認可申請時に早める決議を行い、その通り実行した。
従って3物件の修繕積立金は認可申請時の新所有者に支払われており、原告らには返還請求権はない。
 以上が管理組合の反論で、裁判所は管理組合の主張を全面的に認めました。

東京高裁と最高裁の経過
 平成24年3月15日に下された第1審の判決に対して、同月26日原告ら4名は控訴をしたため、6月6日に公判が行われ、
8月8日に判決があった。
 判決は「本件控訴をいずれも棄却する」というもので、1審に続いて管理組合の勝訴となった。
 しかし、8月30日に原告らは最高裁に上告したため、事件は最高裁で取り扱われることになったが、
平成25年1月31日に最高裁は「上告を棄却する」決定を出し、ここでも管理組合の全面勝訴となりました。

東京高等裁判所の判決理由              
 諏訪2丁目住宅管理組合規約により、「本件修繕積立金は、被控訴人の総会の決議によって分配の時期、
方法等が定められない限り、区分所有者が被控訴人に対して返還を請求することはできず、
被控訴人が消滅する場合に残余財産としてその時点の各区分所有者が、共有持分に応じて分配を受けるにとどまると解される。」
 管理組合は平成22年5月23日に、権利変換計画の都知事認可時点の各区分所有者に分配する決議を行い、
翌平成23年5月29日に権利変換計画都知事認可申請の時点に早めるなどの分配変更決議を行った。
これらの決議は、「法令及び被控訴人規約の定めに照らして不合理とは言えない」
 したがって、修繕積立金の返還請求権は、「本件建替組合が都知事に対し建替えに伴う権利変換計画の認可申請をした時点、
すなわち平成23年6月30日時点の各区分所有者が取得すると解される。」
 控訴人らは、「いずれも上記権利変換計画認可申請に先立って区分所有権を失ったと認められる。
よって、控訴人らは、いずれも本件修繕積立金の返還請求権を有しない。」
 控訴人らは、本件合意形成マニュアル(平成22年7月改定前のもの)を援用し、修繕積立金の返還請求権を有していると主張する。
しかし、「そのマニュアル自体が権利義務の発生根拠となるようなものではない事が明らかで、
控訴人らの主張するような判例や英米法における慣習法と同様のものではない。」
 また、建て替え決議後も団地に住人が住んでおり、修繕に要する経費が必要となり、
「建替え決議により修繕積立金を充当する対象が失われるとする控訴人らの主張は当をえない。」

 まとめますと
平成23年10月10日 原告ら4名が管理組合を訴える。      
平成24年3月15日  2回の審理を経て、第一審判決で管理組合の勝訴
同年同月 26日    原告ら4名が控訴
同年8月8日      1回の審理を経て、東京高裁判決で「控訴棄却」
同年同月 30日    原告ら4名が控訴
平成25年1月31日  1回の審理もなく最高裁で「上告を棄却する」決定
以上で、管理組合の全面勝訴が決まりました。         

 この最高裁の決定を受けて、管理組合の残余財産が確定できる状態になりましたので、4月1 5 日 をもって出納閉鎖をし、
5月の建替組合の通常総会の時に、管理組合残余財産の清算業務結了の報告集会を行います。』
    
 以上が修繕積立金をめぐる民事訴訟のあらましです。
予定通り5月には清算業務結了集会を終えて、諏訪2丁目住宅管理組合は完全に消滅しました。
この裁判報告をもって、私の諏訪2丁目マンション建替えの概要を終えます。

 いよいよ、明日・2013年9月12日は、私が取得するマンション住戸の内覧会になります。
注文通りに出来上がっているかのチェックと、様々な住宅器具の取り扱い方の説明です。
その記念すべき日の前日に、この文書が完成し、ホームページに掲載することになりました。


 このページに不具合が生じて、2015年1月に再度掲載し直した時に、
以下の竣工した時のパンフレットのコピーを、不鮮明ですが追加しました。

 なお、工事竣工後に再入居の引越し終わってから、建替組合より再入居した組合員へ、
引越し等の移転補償費として、1戸あたり50万円が分配された。この補償費は計画時から予定していたが、
工事費の変動に備える意味もあり、公表していなかった。3.11大震災があったが、鉄筋などの建築資材は、
あらかじめ購入してあったので、震災後の資材高騰の影響はあまり受けずに、補償費を払うことができた。
他に工事費清算後の分配金もあった。

 追記。2017年1月14日に建替え組合の清算総会が開催されて、移転補償費の一部として、
1戸あたり81600円を支払うことを決議した。この事業での移転補償費は、1戸あたり合計58万1600円支払われてことになる。
清算結了が遅れたのは、例によって例の人物が起こした訴訟があったので、最高裁の判断を待たなければならなかったからであった。
裁判は建替え組合の全面勝訴で終わり、万が一裁判で負けた時に備えたお金があったので、移転補償費を再度配ることができた。
清算結了総会後、一連の裁判の主任弁護士を務めていただいた栗山弁護士の感想を付け加えておく。
裁判はいくつもあり、長年にわたったが、シティコンサルタンツが来るまでは、理事の阿部氏が管理組合文書を起案していた功績が大である。
阿部氏がいなかったら、弁護士と管理組合の意思疎通がうまくいかなかったと思うという感想を弁護士が述べていた。。
私も同感であり、2006年3月の臨時総会第3号議案もそうであったが、訴訟という微妙な問題で、相手方へスキを見せない決議をしている。
私は持病の関係で、建替え組合の役員になっていないが、阿部氏も持病があり建替え組合の役員にはなっていないが、彼の功績は大きかった。








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