研究開発では新たに装置を導入して試験を行うことが当たり前にあります。量産の場合と異なり、経験の浅い人経験値の蓄積されていない設備で試験を行って事故を起こす懸念があります。


 そこで“要チェック項目”を記述した【新規設備導入・改造時の安全チェックシート】で多岐にわたる危険性のチェック安全対策の確認ができるようになっていました。以下にいくつかの項目を参考として示します。
<チェック項目例>
・床の耐荷重、      ・危険物の量
・運転資格の要否、    ・必要な保護具
・回転部のカバー、    ・電気配線端子のカバー
・高圧油飛散からの保護、 ・有害光線からの保護
・計器類の取付・表示(温度、圧力、電圧、回転数等)
・配線の保護(熱や油等による損傷防止)
・起動操作:いきなり動作させない
・非常停止スイッチの設置条件
・過走/誤作動の防止、   ・安全装置の機構
・インターロックの設置
・健康被害防止(中毒、酸欠、騒音)
・アース(感電防止)、転倒防止


 様々な経験から蓄積された上述のチェック項目での安全性確認に加えて、新たな装置や改造装置での試験に関するリスクアセスメントから見えてくるリスクを検討し、対策を明示した上で安全課に申請を行い、承認を受けてから新規設備を導入し、研究開発を実施する という制度になっていました。
 例えば、運搬機械などで電動化の研究開発を行う場合は、豊富な経験値を有するいわゆる“メカ”関連危険への対処に加えて、“電気”に関する危険への対処の必要性が新たにでてきます。
 高電圧の大量の電荷を蓄積する二次電池(例えばノート型パソコン・携帯電話・自動車・飛行機などで火災や爆発事故を起こしたリチウムイオン電池)を試験する設備を導入するような場合は、新たな危険性を十分検討して導入する必要があるわけです。


 また、この制度では、今まで使っていた設備だからと試験対象や内容の変更に合わせて安易に改造をする場合の危険を想定して、改造時もチェック・承認の仕組みを通すことになっていました。
 例えば、材料の劣化状況を様々な温度で評価する恒温試験装置を流用して、爆発危険性のあるリチウムイオン電池の試験を様々な温度条件下でするようなことがないようにという配慮です。


 K地区では、【安全手帳】同様、十数年前に当時の安全課課長・主任はじめ関係者で、【新規設備導入・改造時の安全チェックシート】と そのチェック状況の安全課での承認 という制度を 作り上げてくれていました。


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