クレーンでの吊り作業では、ルーズな機器・機材の管理や不用意な行動が重大な事故につながります。吊り作業時に吊具と吊荷の間に指を挟まれるなどの事故発生に伴い、α社グループ内で クレーン作業時の管理・ルールの徹底が求められていました。


 K地区では、安全課から安全委員会に “クレーン電源ON時 吊荷や吊具に触らないこと” というルールが提案され、承認されました。
 そのルールで実際に分解組立などの作業ができるのだろうかと思いましたが、現場で実際にクレーンを頻繁に使っている労働組合側委員の方からも 反対意見はありませんでした。
 その後、あらためてその委員の方に問い合わせましたところ、「クレーンで吊荷を 微細に上下調整しながらでないと分解組立ができない場合があるが、安全課との事前協議で 一方的な安全課課長の説明に対して 意見が出せなかった」とのことでした。


 これでは ルール違反の状態で 分解組立作業をすることにならざるを得ないので、新ルールに疑問を持つ方々の協力のもと、実際の分解組立作業を映像に撮り、安全課と労働組合の方々に集まっていただいて、
・実際の分解組立作業をする場合は、吊った部品や装置を上下に微調整を
 する必要がある場合がある
・新ルールを実現するためには、自動組立装置の開発などが必要である
 (研究開発中の装置の分解組立のための自動化は 現実的には困難)
・実行不可能なルールの制定は ルールの形骸化につながり、事故の起こり
 やすい不健全な土壌を醸成することになる
・安全は、危険予知・リスクアセスメント、ルールの確実な遵守、また、
 クレーン・吊具の確実な保守点検 で確保すべき
と訴え、新ルールの撤回を求めました。
 新ルールは、安全委員会で見直しが図られ、2ヶ月後に撤回されました。


 このような 現場・現実を無視したルールなぜ 制定されてしまったのか究明再発防止につなげることが必要なのですが、そのような活動が行なわれることはありませんでした。


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