形だけの指令の発令は “情報セキュリティ”の分野においても 同様に散見されていました。そのひとつは、装置の設計図面の中で“組図”と呼ばれる図面の取り扱いに関するものでした。
 “組図”は、装置を組み立てる際の要領が記述されている図面です。確かに様々なノウハウが含まれていますし 装置全体の構造が分かる図面ですので、部門外または社外に対して秘密にすべきものです。それが“極秘”として取り扱うように 指示が出されたのです。


 “極秘”扱いになると、それを見ようとするたびに 鍵をその管理者である管理職から借りて 保管用キャビネットから出し、それを関係者以外に見られないよう取り扱い、その日の内に戻すということが必要になります。
 通常、組図はA1やA0サイズの大きなものですので、壁に貼って組み立て時に見ながら作業します。組み立て作業が 一日で終わることは あまりありませんので、壁に貼ったままになることが多いのです(組み立て場は鍵がかかる部屋)。
 また、量産になった場合は、製品のサービス部門に 同様な内容が冊子やデジタルデータで配布されます。


 つまり 過剰な指令形だけの指令現場を無視して出していたわけです。
 本件は「“極秘”では仕事になりませんよ」と指摘をした直後に、K地区の情報セキュリティ担当管理職が すぐに適切に動いて調整をしてくれ、通常の“秘”に修正になりました。


 余談のさらに余談になりますが、α社では イントラネット内で ある部門の原価データや不具合対策費用の10年以上に渡るデータや文書群が 全社公開になっていたことがあります(すぐにそのデータベースの管理者の方に連絡し、そして すぐに それは見ることができなくなりました)。
 また、K地区では、アクセス権限の設定権限のないはずの人が 権限行使をしたり、アクセス制御そのものが 無効に(誰でも閲覧可能に)書き変わっていたのを 本社情報セキュリティ課が指摘していながら 原因究明や対策を指示することがなかったり という不思議な状況がありました(結局 誰も原因究明をすることはなく、したがって 再発防止も図れないままでした)。


 情報セキュリティの分野においても、安全管理同様 仕組みはあれど 機能せず の状況だったのかも知れません。


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