“はじめに”で触れました笹子トンネルを管理運営する会社においても、点検時に “落下している天井板吊りボルトを発見した”という事態に対して、「周辺ボルトの点検や抜きり取りで全体の点検を行うべきだ」「止めてしまった打音検査を復活させるべきだ」という意見がでていたのではないでしょうか。


 実際には 行うべき点検や検査が実施されず 重大な事故に至った ということから 推察しますと、それらの意見は、厄介な点検を避けようとする上司や同僚達の「数十年も何も起きてないんだから大丈夫なんじゃないの」という声や雰囲気に 流されてしまった、また、排除されてしまった ということかもしれません。


 世の中では、優良と思われている企業 や 信頼の上に成り立っている教育現場・役所・公益法人などで驚くような事故や不祥事が報じられています。
 爆発・火災・中毒などの事故、品質保証・会計データの改ざん、排気ガス・燃費データ不正、無資格者検査、登山訓練時の雪崩巻き込まれ事故、公文書の改ざん(書き換え)、暴力・パワハラ、それらの隠蔽などなど、枚挙に暇がないほどです。


 これらの根っこには、
■事なかれ主義、見て見ぬふり
■時代錯誤、お上意識
■無関心、思考停止
など どれかが 風土として組織内にあって、
■種々の問題の放置、不作為
■様々な建設的な議論や批判の封印、逆ダイバーシティ
■議論に裏打ちされない方針展開、PDCAのCA無きPDサイクル
■“時代の変化”や“ものごとの軽重”の無視、前例踏襲、マイクロマネージメント
■法令やルールの制定の趣旨を考えない盲目的遵守[非常時であっても]
■ウチには 〇〇ウェイがあるから大丈夫
 (原発での “5重の安全装置があるから大丈夫”と類似)
になってしまい、
■“災害・不祥事防止のための仕組み”の アリバイ作りのための“道具化”
が定着し、不幸にして事故があると、
■その事故に関してだけ徹底的再発防止実施(典型:K地区内での信号機設置
といった その場しのぎの連続 が、最終的に 重大な事態 を招いてしまった ということなのではないでしょうか。


 誰しも厄介なことに首を突っ込みたくないですし、仲間との和や上司・部下との良好な関係を大事にしたいですので、悪魔のサイクルへの流れと薄々分かっていても、流れに乗っかってしまいがちです。


 K地区内での安全管理に関する講習会で講師を務めて下さった方の締めの言葉が印象に残っています。
 それは「安全管理は、“一人ひとりカケガイノナイひと”が 出発点」という言葉でした。
 悪魔のサイクルへの 流れに 乗ってしまう のを 止める力の源泉 は、「家族が もし悲惨な事故に会ったら・・」「友人や同僚が過酷な状態に陥ったら・・」という “への思いだ とおっしゃっていたのだと思います。


 会社人生の終盤で出会った“興味深い経験”を思い出しながら、できることなら悲惨な事故の発生を少しでも防ぎたいとの思いで、私なりの推測や分析をしながら 安全管理の形骸化事例紹介 をしてまいりましたが、どなたかの、また、どこかの職場での 事故や不祥事の発生防止 のお役に 少しでも立てれば 幸いです。


            2018年4月19日 形骸化防止プロジェクト


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