K地区には 一ヶ所だけ信号機があります。その信号機は、構内道路での事故への対処の中で 設置されたものでした。
 その事故は、前節の ものごとの軽重 無視問題 で述べましたトンネル付近の坂道で、飛び出してきた小動物を避けようとして 自転車通勤者が転倒し 右足を骨折したというものでした。


 事故の対策として、駐輪場が 本館の横からトンネルを抜けて少し坂道を下ったところにある厚生施設の横に移設されたことに伴い、信号機が設置されました。
 もともと 厚生施設を使う際に渡っていた道路であり、構内制限速度は時速30km往来は少なく 見通しの良い道路なのに 「なぜ 信号機が設置されたのだろう」、本館の正面玄関から来客駐車場へと渡るところには 横断歩道もなく 薄暗いので「安全対策するなら そっちが先ではないか」と 不思議に思いました。


 K地区は丘の上にあり、通勤時は曲がりくねった歩道の無い坂道を行き来することになりますので、小動物のみならず通学中の子供たちや自転車・自動車との衝突の危険もあります。
 そんな通勤時のリスク全体を把握し、対策を皆で共有するのが事故の効果的な未然防止につながると思い、私なりのリスクアセスメント(素材)を提示しましたが、提案が受け入れられることはありませんでした。


 事故が発生してしまったら、その件に関してだけは“徹底的に対策”という最適化は図るが、通勤時のリスク全体を考えて より適切な対応をしようとは思わないということのようでした。
 ものごとの軽重 無視問題 で記述しましたように、“重大事故につながらない場合でも警告表示がたくさんあり、重大事故になりかねない場合であっても警告表示がない”というのと同様、都合のよい部分最適化だったのかもしれません。


 余談:「この敷地内で怪我をしないようにしなければならない」

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