製品を技術の進歩に合わせて進化させるに当たり、様々なタイプの新型二次電池を評価するための装置が導入されることになりました。
 私の所属部署R部もその新規導入装置を使った試験に 一部参画することになり、評価試験用恒温槽を含むシステムの使い方について学ぶことになりました。


 導入部署の作成した専決書を見せてもらうと、導入される恒温槽は“防爆仕様”になっていました。
 新型二次電池では 飛行機・自動車・パソコン・携帯電話などで 爆発・火災・発煙等の事故が起こっているものもあり、十分注意する必要があることが分かっていましたので、防爆仕様で設備導入が計画されていたわけです。


 ところが、いざ 恒温槽を含むシステムが 導入・設置されてみると、防爆仕様には なっていませんでした。
 設備導入や改造に当たっては、新規設備導入・改造時の安全チェック で述べましたように安全に関する様々な事柄をチェックすることが求められ、そのための資料【設備導入・改造時チェックシート】を安全課に提出して承認を得ることになっていました。
 設備導入部署の試験実務主担当の管理職に問い合わせをしたところ「安全課で導入・設置を承認されています」とのことでした。


 そこで安全課に、実態と専決書の記述が異り 安全上問題があるのではないかと指摘したり、導入部署の提出資料に関して安全課で「どのような確認がされたのか」問い合わせましたが、無視されるだけでした。


 結局、設備導入部署に対して直接問題点を指摘し、導入されてしまった設備の改造案(爆発性・中毒性ガスの検知センサー設置、ガス検知時のエアパージなど)を提示し、防爆仕様の代わりとなる改造(安全対策の追加工事)をしてもらうことになりました。


 設備の改造時も、新規導入と同様、安全対策が検討・実施されているか確認の上 承認するというルールになっています。
 さらに設備改造は安全対策不備を補うためのものであったにもかかわらず、安全課課長は「【設備導入・改造時チェックシート】の提出は不要」と設備改造実施部署(その設備を導入し改造して評価試験に使用しようとしている部署)に連絡し、安全チェックの仕組みを 自ら無視 してしまいました。


 安全課課長の怠慢ぶりには あらためて驚かされました。


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