第二章16節 設備導入時の安全確認に関して以下の3つの問題提起をしましたが、安全委員会では本件においても、原因対策が議論されるどころか、以下のような 不思議な回答 が示されました。

問題提起1:二次電池評価試験用新規設備を導入する際、どんな観点で
      申請内容を確認されたのでしょうか?

回答   :2011年研究予算での計画・導入時の「設備導入・改造時
      チェックシート」に問題はなく適正に処理致しました

 およそ 答になっていない回答 です。新型二次電池では 飛行機・自動車・パソコン・携帯電話などで 爆発・火災・発煙等の事故が起こっており、十分注意する必要があることは分かっていたはずなのに、爆発・火災を 重点的にチェックすることもなく 素通りさせても 安全委員会で問題にならなかった わけです。


 次の問題提起でも同様でした。

問題提起2:なぜ 防爆仕様のはずが “そうではなかった” ことが分かった後も、
      申請を差し戻しに されなかったのでしょうか?

回答   :納品は発注仕様通りであったと報告を受けており、検収処理は
      実施部門および購買課にて適正に完了済みです。
      防爆仕様の能力不足は組織変更・設備移管後の稼働計画時に
      実験条件が厳しくなったものと思われます。
      実働に関しましては、リスクアセスを基に「稼働前チェックを
      実施して、危険性の低いことを関係者間で確認・実験を開始
      されています。


 これも およそ 答になっていない回答 でした。専決書と異なり、“発注仕様通り防爆仕様ではない ということを問題にしていたのです。
 いざ実験を始める際に 実験条件が厳しくなり “防爆仕様の能力不足” となったではなく、“厳しい実験条件”を想定して “防爆仕様”で 設備導入計画専決書に記載)をしていたのでした。


 実験を開始したのは “危険性の低いことを関係者間で確認” できる範囲、例えば 単三乾電池ほどの 容量のごく小さな新型二次電池電池での予備試験でした。
 本格的な試験を開始できたのは、防爆仕様の代わりとなる安全対策(爆発性また中毒性ガスの検知センサーの設置、ガス検知時のエアパージなど)の追加工事が 終了してからでした。


 この問題提起でも、上述のような回答に対して 異議が唱えられることはありませんでした。


 さらに次の問題提起でも同様でした。


問題提起3:なぜ 導入設備の”安全対策不足解消のための改造”を
      ルール違反をして「申請は不要」とされたのでしょうか?


回答   :先にご説明した通り、ルール徹底の甘さを反省しお詫び致します
      早急に事実にあったルールへ見直すと共に、周知徹底を進めます


 まるで、安全管理を指導する立場の安全課課長として 誰かがルール違反したことで “ルール徹底の甘さ” を反省しているかのような、人ごとの回答 でした。さらには “ルールを見直すと共に、周知徹底” と K地区員への指導強化 のごとく 述べられていました。


 ルール違反者をK地区員にすり替えたような 回答 についても、安全委員会で “問題” として取り上げられることはありませんでした。


 結局、安全委員会では、総括安全管理者はじめ 議決権を持つ運営委員の多くは 新規設備導入・改造時の安全チェック という安全を守るための仕組みの趣旨を 理解しようとせず、形だけの安全チェックで良し としていた ということだと思います。

                   戻る ⇒ 第6節
                   戻る ⇒ 第三章目次