第二章18項 で述べました 事故の未然防止のために設けられた 全社安全ルールを無視した “K地区安全課による外注工事ルール” での運用 は、“悪質な事案” といってもいいほどの 安全課の怠慢でした。
 工事時の 危険要素(@火気 A危険物 B高圧ガスボンベ など)が 一つでもあれば、その危険に対処するため、【外注業者防災手帳】に従って事故防止を図るようにしていかなければならないにもかかわらず、安全課は その要因が3つ以上重なった場合には ルールに則った安全管理を行う ということを決めていました。
 研究開発部署から 火気を使う工事申請を受けても 安全管理をほとんど行なわなくてもよい案件と認定 していたわけです。


 外注業者の方々は 不慣れな場所で作業を行うことになるので、工事場所近辺にある機器や保管物の危険情報(可燃性・爆発性・毒性・高電圧・大容量電荷などの情報)を きちんと伝えることが必要となります。
 また、安全に対する意識が K地区以下の場合は、K地区のレベルに合わせてもらうよう 要請する必要があります。


 そのようなことを考慮して、作業場所の 特殊な危険に精通している研究開発部署一般的な安全管理に精通している安全課連携 して 外注工事に当たる ことになっていたわけです。


 ところが、この“悪質な事案”を契機として、安全課主導で 外注作業に対応し 責任を負う ことになりました。安全課は 各試験室にある機器や保管物などの危険情報を 詳細に把握しているわけではない ことが 顧みられることはありませんでした。


 また、同時期に、新開発のハードまたソフトを搭載した試作機を試験する野外試験場での試験も、研究開発部署主導ではなく 安全課の責任 で行われることになりました。


 試験場使用が全部でなく半分でよい場合は、2チームが話し合い、安全を確保して 同時に 同じ試験場で 試験をすることもあります。
 試験を行う各チームの責任者は、試作機のリスクに精通していますし、試験員(操作者、計測担当者等)の能力や判断力も分かっていますので 適切な安全管理を行えるわけですが、安全課で責任を持てるようにするためには よほどの人員増加を行って 多岐に渡る試験の内容に精通するよう 教育していくことが必要になるはずです。


 しかし、そのようなことは議論されることなく、また、各試験におけるリスクアセスメント設備導入時の役割や責任の在り方 などとの考え方の不整合についての検討もなく、外注工事試験場での試験の二つが 安全課の責任安全管理 が行われることになりました。

 参照)余談:研究開発リーダーは 早く成果を出したい


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