不思議な懲戒処分に記しました懲戒処分の理由で特徴的なのは、“α社グループ内の事故事例と安全手帳を結び付ける活動”と“過去の死亡事故に関連した文書”に関する件 だということです。
 そこに、α社人事部が 触れてほしくないことが あった ということかもしれません。


 たしかに事故の発生は名誉なことではありませんし、2012年以降死亡事故が続いていましたので、掲示文書が同様な事故の再発防止のために有益な文書であっても、社員全員が共有できる掲示板で 事故に触れてほしくなかった のかもしれません。
 K地区員専用の安全掲示板のみの投稿であれば 懲戒処分に至らなかったのかもしれませんが、K地区員専用の“安全掲示板”は閲覧者が少なく 安全委員会の運営委員でさえ見ていないという状況でしたので、重要と思う事項は 多くの方が閲覧している“K地区ニュース”(社員全員が閲覧可能)に投稿していました。


 では、人事部はいったい何を恐れていたのでしょうか。人事部の方々は 様々なバランスを考え、どちらかというと 保守的な考え方で運営をしていく方々のようですので、何か恐れていたことがあったため、強引な手法を使ってでも 掲示内容の削除に もっていったものと思われます。


 恐れていたのは何かを伺ってみたいところですが、それは叶いませんので、私なりに 推測をしてみますと、
・死亡や深刻な負傷事故に関連して 出てきかねない様々な意見、
 改善要望、要求など
・“危険性を認識していた中での事故発生” ではないか と 疑われること
を恐れていたのではないでしょうか。


 安全性の確保を真剣に考え出すと、現状の生産工程はじめ 活動の仕組みや装置・道具を変えなければならない場合があります(参照:不思議な懲戒処分 処分理由6で記した追加安全対策)。
 そのためには 多くの労力・時間・資金が必要となります。そんな面倒なことは 避けたい という心理が働いても不思議はありません。


 また、一般に不祥事が露見すると 当事者達から「記憶にありません」という言葉が続々と出てきます。“認識している”ことで 罪に問われることになりかねませんので、企業防衛上は「危険性を認識していませんでした」と言えるようにしておくことが 大事だと思っていたのかもしれません。


 残念ながら世の中では、いったん事が起こると、全体像を見ることなく部分のみを見て、批判が殺到することがあります。
 となると、事故事例をもとに 一生懸命 事故事例とリンクさせた安全手帳を作り上げて事故を減らしても、1件でも事故が起こると、その安全手帳をもとに「危険性を認識していたでしょ」ということで 過剰な批判を浴びてしまうかも しれません。
 それを恐れて、何年もかかって少しずつ作り上げてきた “事故事例安全手帳内ルールリンク集”が 槍玉に挙がったのではないか と推察しています。


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