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趙氏孤兒 
★★★★★


2010年年末から2011年正月にかけて上映された陈凯歌監督の賀片电影(正月映画)。
中国人なら誰でも知っている代に書かれた戯曲を、陈凯歌監督が独自にアレンジしたものです。

春秋時代(紀元前8世紀から紀元前5世紀)に並立していた諸候各国の中、の国では、朝廷に忠誠を尽くす文官趙盾鮑国安)と重用される彼を妬む武官屠岸贾王学圻)の確執から、趙盾の一族300人が屠岸贾によって騙し討ちにされる事件が起こりました。
趙氏孤児」は、その孤児と彼を育てた町医者程嬰の10数年にも及ぶ仇討ちの話です。

陈凯歌監督の正月映画だけに、出演陣がとても豪華。
非诚勿扰」の葛优、「梅兰芳」の王学圻、「非常完美」の范冰冰、「赤壁」の張豊毅…。それに何より、あの大陸一番のイケメン俳優、黄暁明まで出ています(「神雕俠侶」の凛々しさとは違った薄気味悪さが芸域を広げたと言えば言えなくもありませんけど、タイトルバックの出演者名を見るまで彼だと気がつきませんでした)

中国の時代モノは、セットや衣装も迫力満点です。
とくに前半は、古代の町並みや飯屋の造作、華麗な范冰冰の衣装も楽しめます。范冰冰がすごく美しい死に様まで形式化されて、きれいです。

仇討ちモノですが、陈凯歌監督ならではの視点で、騙し討ちをする方、仇討ちを志す方、双方の心の漣がテーマです。
単純化された歴史劇を現代人の心でで解釈しようと試みる監督、大作でエンターテイメントにもこだわらなければいけないし、固執する理屈でもストーリーを紡がなければならない…。簡単なストーリーを複雑に解釈する監督ならではの作品に仕上がっていました。


ストーリーは
国の政治を脇から支え、代々強い勢力を保ってきた趙盾鮑国安)の一族は、息子の嫁に王族の庄姫范冰冰)を迎え、戦争からも凱旋。今やその繁栄は頂点に。しかし、同僚の将軍官屠岸贾王学圻)は以前から趙盾をライバル視し快く思っていません。そんな折、愚かな国王の起こしたふとした事件から、屠岸贾一族に強い妬みと恨みを抱くようになります。
そしてある日、栄華を誇った家に屠岸贾の復讐が待っていました。
屠岸贾は国王に毒を盛り、その罪を趙盾になすりつけた挙句に、一族300余人無残にも皆殺しにしまいました。

唯一の例外は、庄姫が自らの命と引き替えに守った、生まれたばかりの赤ん坊です。
でも、屠岸贾はその嬰児でさえも虐殺しようと…。

庄姫
の死に際に赤子を託された出入りの医者程嬰葛优)は、赤子をこっそり薬箱に隠して裏口から逃げ出します。そして一族と親交厚い公孫杵臼張豊毅)を頼りますが、屠岸贾の知るところとなり、公孫杵臼は自害し、預けていた赤子と程嬰の妻(海清)もその場で殺されてしまいました…。

でも、実は殺されたのは家の赤子ではなく、程嬰の実の子だったのです。
程嬰屠岸贾への復讐を誓い、家の赤子を養育することになります…。
家の孤児は、15歳になるまで町医者程嬰の子として育てられ、さらには程嬰の策略から、仇の屠岸贾の屋敷に入り込み、何も知らない家の孤児は屠岸贾を義理の父として慕うようにまでなります…。屠岸贾も彼を我が子のように可愛がり、武芸を教えこみます…。そして…。


 
どんな世界でも、勝ち残って成功者となるためには、敵対者を消していかねばならないようです…。
ある日、野原で武芸を教える屠岸贾家の孤児が尋ねます。
怎么才能没有敌人?
(どうしたらお義父さんみたいに強く、敵なしになれるの
屠岸贾の答えがふるっています。
如果人人都能做到不把自己的敌人当做敌人, 就天下无敌了可很难做到。」
(もし、この世の中の皆が自分の敵を敵と思わなかったら、この世の中から敵はいなくなり、戦いもなくなる。でもそれは簡単なことじゃあない。だからお義父さんはライバルを皆殺しにしてきたんだよ)

なんだ、本当は屠岸贾もわかっているんだね。
でも、心が苦しみもがき、そして妬んで恨み、どうしても晴らさずにはいられない、そんな敵を自ら作らざるを得ない柵の中に生きているのが人間の性なのか…。

監督:

出演;
    

陈凯歌

葛优
王学圻
黄暁明
范冰冰
趙文卓
鮑国安
海清
張豊毅 etc.