αX工場で2014年4月に発生した新型設備稼働中の一酸化炭素(CO)ガスの爆発による死傷事故について、大学教授を委員長として 詳細な事故調査が行われ、その年の年末に 報告書が出され、その内容は 社外にも公開されました。
 事故調査報告書を読んでみると、原因が究明され的確に対策が提言されているように思いました。αX工場では、調査と並行して、打てる対策を速やかに打ち、最終的には報告書に記載の対策以上の“対策”が打たれたものと思います。


 ただ、装置は破損し 内部から1トン以上のものが吹き飛んでいた にも関わらず、“爆発” ではなく “急速燃焼” という言葉が使われていたのには 違和感を覚えました。
 ちなみに 調査報告書の中で“爆発”という言葉が使われていたのは、事故の考えられる原因として、@ 水蒸気爆発ではない A 粉塵爆発ではない B 溶鋼の突沸(爆発的沸騰)ではない C 燃料等の爆発ではない という“否定された原因”に関するところだけでした。事故原因は、D COガスの“急速燃焼”という表現でした。
 社長は 社内外で “爆発” という言葉で 事故を語っていました。事故の調査は、今後の再発防止が目的のはず ですので、事故状況が理解しやすい “爆発” という言葉を使うべきだと思うのですが、なぜ “急速燃焼” という言葉が使われたのか 不思議でした。


 私が懸念しているのは、事故対策での部分最適化問題 で述べましたα社の傾向です。「事故が発生してしまったら、その件に関してだけは“徹底的に対策”という最適化は図るが・・・」という点です。
 最終報告書の 7章 安全な職場づくりへの課題と提言では、第一章に記述した内容と同様の “あるべき姿” が記述されていますが、大事なのは“能書き”や“形”ではなく、“実践” です。


 αX工場で新型設備を導入する際に、どのような 新規設備導入時の安全チェック が行われたのか、どこが検討不足だったのか、何が抜けていたのか。
 また、どのような リスクアセスメント(参照:第一章6節 安全管理と5Sの指導)が行われたのか、どこが検討不足だったのか、何が抜けていたのか。
 また、安全手帳相当のルール集は 新設備の導入にあたってどのように改訂されていたのか、どこが検討不足だったのか、何が抜けていたのか。


 これらを明らかにして、血を流して学んだことを 貴重な財産として具体的に残して いかなければ、いくら有識者が集まっても 新たな装置を導入するような場合に 有意義な議論をするのは難しいと思います。


 この事故調査委員会の事務局であった本社安全推進部部長の 本報告書公開直後の言動 (実態把握をしようとしない安全推進部) から、「事故の再発防止は なおさら難しい」と思わざるを得ませんでした。


                   戻る ⇒ 処分理由6                    戻る ⇒ 第6節
                   戻る ⇒ 第四章目次